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爪白癬の内服3剤、効き目の前に見るもの――併用薬・採血・判定の時期

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前提――内服の前に、直接鏡検などで爪白癬であることを確かめる。
選ぶ――3剤の効き目を同じ物差しで比べた根拠は限られ、併用薬・肝臓と血液・妊娠といった患者側の条件で候補が絞られることが多い。
判定――濁った爪の見た目が戻るには、新しい爪が伸びるのを待つ必要がある。効かないと判断する前に、判定の時期と耐性菌の可能性を考える。
[1][4][5][6][7][8]


はじめに

足の爪が白く濁って厚くなった高齢の患者さんが、お薬手帳を出しながら「爪の飲み薬があると聞いたのですが」と相談に来られることがあります。爪白癬(tinea unguium)の内服薬は国内に3剤あります。テルビナフィン(terbinafine)、イトラコナゾール(itraconazole)、ホスラブコナゾール(fosravuconazole)です。どれを選べばよいのか、指導医によって好みが違うように見えて迷った経験のある専攻医もいるのではないでしょうか。

「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」では、このうちイトラコナゾールの推奨度が下がりました[1][3]。本稿では、まず3剤の根拠の位置づけを確認し、そのうえで「効き目の差」ではなく、併用薬、検査、効果判定の時期といった患者側の条件から3剤を並べ直します。


背景知識

内服が原則、しかし外用が多く使われている

ガイドラインは、爪白癬の治療では従来から経口抗真菌薬の内服が原則とされてきたこと、外用薬は内服ができない、あるいは内服を希望しない患者さんに用いることを述べています[1]。ただし、テルビナフィンの電子添文は、使用を外用抗真菌薬では治療困難な患者さんに限っており、病変の範囲や重症度などから内服の適否を判断することになります[8]。

一方で、国内の保険請求データ(2014〜2021年度)を用いた研究では、研究対象とした4剤(イトラコナゾールは含まない)のうち外用薬、特にエフィナコナゾールの処方が多く、高齢層でその傾向が目立つことが示されました[2]。著者らは、この傾向がガイドラインの推奨と実臨床とのずれを示している可能性を指摘しています[2]。高齢者ほど併用薬が多く、内服をためらいやすいことが、外用に流れる理由の一つなのかもしれません。この理由づけは推測であり、研究で確かめられたものではありません。

ガイドライン2025の推奨度

ガイドライン2025では、爪白癬の治療が次のように位置づけられています[1]。

治療 2025年版 2019年版
テルビナフィン内服 A A
イトラコナゾール内服 B A
ホスラブコナゾール内服 A A
エフィナコナゾール爪外用液 B B
ルリコナゾール爪外用液 B B

推奨度Aは「行うよう強く勧める」、Bは「行うよう勧める」。2025年版は文献[1]、2019年版は文献[3]による。

イトラコナゾールについて、ガイドラインは有効性、併用禁忌薬と併用注意薬の多さ、パルス療法の煩雑さを挙げ、第一選択としては推奨しがたいと説明しています[1]。

3剤の比較の根拠

内服薬どうしを比べた根拠としては、Cochrane レビュー(2017年)があります[4]。爪白癬に対する内服薬の48のランダム化比較試験を検討し、テルビナフィンはアゾール系に比べて臨床的治癒と真菌学的治癒の割合が高く(テルビナフィンに対するアゾール系のリスク比は臨床的治癒0.82、95%信頼区間0.72-0.95、真菌学的治癒0.77、95%信頼区間0.68-0.88)、有害事象の頻度には差がない可能性が高い、と結論しています[4]。ただし、このレビューの文献検索は2016年10月までであり、2018年に第III相試験が報告されたホスラブコナゾールは含まれていません[4][5]。

ホスラブコナゾールの国内第III相試験では、48週時点の完全治癒(爪の混濁の消失と、直接鏡検での菌陰性の両方)が本剤群59.4%(101例中60例)、プラセボ群5.8%(52例中3例)でした[5]。一方で、ガイドラインは、ホスラブコナゾールとほかの内服2剤との比較試験はなされていないと明記しています[1]。

つまり、3剤のあいだの効き目の差を、同じ物差しで比べた根拠は限られています。そのため以下では、効き目以外の条件から3剤を並べます。これは文献から組み立てた整理であり、この順で選んだ場合の結果を検証した研究があるわけではありません。


患者側の条件で3剤を並べる

まず、爪白癬であることを確かめる

爪の混濁や肥厚は、爪白癬以外でも起こります。ホスラブコナゾールの電子添文は、直接鏡検または培養などに基づいて爪白癬と確定診断された患者さんに使用するよう求めています[6]。内服は数か月単位の治療になり、採血も伴います。その前提として、菌がいることを確かめておく必要があります。

併用薬: お薬手帳を最初に見る

3剤の違いが最もはっきり出るのが、併用薬です。

    1. イトラコナゾール: 併用禁忌が多い(併用禁忌の表に並ぶ薬剤名は、配合剤を1件と数えて35件)[7]
    1. テルビナフィン: 併用禁忌の記載はなく、併用注意がある[8]
    1. ホスラブコナゾール: 併用禁忌の記載はなく、併用注意がある[6]
      イトラコナゾールはチトクローム P450 3A4(cytochrome P450 3A4: CYP3A4)と P 糖蛋白(P-glycoprotein)の両方を阻害するため、多くの薬剤の血中濃度を上げます[7]。併用禁忌には、シンバスタチン、リバーロキサバン、ダビガトラン、チカグレロル、スボレキサント、トリアゾラムなど、高齢の患者さんが内科や循環器科から処方されていることのある薬剤が含まれています[7]。また、投与を終えた後も血中濃度はゆっくり下がるため、終了後に新しく薬を始めるときにも注意が必要とされています[7]。

テルビナフィンはチトクローム P450 2D6(cytochrome P450 2D6: CYP2D6)を阻害し、三環系抗うつ薬やデキストロメトルファンの血中濃度を上げることがあります[8]。シクロスポリンの血中濃度が下がったという報告もあり、移植後の患者さんでは注意が必要です[8]。

ホスラブコナゾールは CYP3A を阻害するため、シンバスタチン、ミダゾラム、アゼルニジピンなどは併用注意とされています[6]。また、ワルファリンとの併用で著しいプロトロンビン時間国際標準比(international normalized ratio: INR)の上昇があらわれることがあるとされ、開始前に服用を確認し、プロトロンビン時間などの測定回数を増やすよう求められています[6]。

イトラコナゾールで併用禁忌に当たる薬を一つでも飲んでいれば、その時点で候補から外れます。また、肝臓または腎臓に障害があり、コルヒチンを服用中の患者さんにも禁忌です[7]。併用薬の多い患者さんでは、お薬手帳を最初に確認することが、薬を選ぶ作業の大部分を占めるといってよいでしょう。

肝臓・血液・腎臓・心臓・妊娠

テルビナフィンには、重篤な肝障害と、汎血球減少・無顆粒球症・血小板減少について警告があり、死亡例も報告されています[8]。投与前に肝機能検査と血液検査を行い、重篤な肝障害は主に投与開始後2か月以内にあらわれるため、投与開始後2か月間は月1回の肝機能検査を行い、その後も定期的に肝機能検査と血液検査を行うこととされています[8]。重篤な肝障害、または汎血球減少・無顆粒球症・血小板減少などの血液障害がある患者さんには禁忌です[8]。

イトラコナゾールは、重篤な肝疾患の現症・既往のある患者さんには禁忌で、定期的な肝機能検査が望ましいとされ、低カリウム血症があらわれることがあるため、定期的な血中電解質検査も求められています[7]。また、うっ血性心不全についての注意があり、既往のある患者さんや心疾患などのリスクのある患者さんでは、下肢のむくみや息切れが出たらすぐに受診するよう指導することが求められています[7]。

ホスラブコナゾールでも、肝機能検査を行うなど観察を十分に行うこととされています[6]。国内の実臨床で128例の検査値を追った研究では、投与中に γ-GTP の上昇が目立ち、研究で用いたアルゴリズム上の中止検討基準に該当したのは肝機能で3例(2.3%)、腎機能で5例(3.9%)でした(実際に中止した数とは異なります)[9]。また、単施設の36例を対象とした別の研究では、投与後に27.8%で腎機能の悪化がみられ、アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme: ACE)阻害薬またはアンジオテンシン II 受容体拮抗薬を内服している患者さんで多かったと報告されています[10]。この研究は症例数が少なく、頻度をそのまま一般化することはできませんが、腎機能も投与前後で確認しておく理由にはなるでしょう。

妊娠については、イトラコナゾールとホスラブコナゾールは、妊婦または妊娠している可能性のある女性に禁忌です[6][7]。妊娠可能な患者さんには、投与中に加え、終了後もイトラコナゾールでは1か月間、ホスラブコナゾールでは3か月間の避妊について説明します[6][7]。テルビナフィンも、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ使用します[8]。

効かないと判断する前に

爪白癬の治療で迷いやすいのが、効果判定の時期です。ホスラブコナゾールとイトラコナゾールの電子添文はどちらも、一度濁った爪は、新しい爪が伸びてこない限り元に戻らないことを明記しています[6][7]。見た目の回復には新しい爪が伸びるのを待つ必要があり、内服を終えた時点で爪が濁っていても、それだけで無効とは判断できません。

この判定の時期について、ホスラブコナゾールでは国内のランダム化比較試験があります[11]。治療開始から24週の時点で、爪の混濁の割合が55%以上減っていた患者さんでは、追加の治療をしなくても72週時点の完全治癒率が73.3%でした[11]。55%未満しか減っていなかった患者さんを経過観察と追加投与に割り付けたところ、完全治癒率は経過観察群29.6%、追加投与群46.7%で、有意差がありました[11]。これは追加投与の効果を検討した臨床研究であり、追加投与を電子添文の用法として示すものではありません[6][11]。

それでも反応が乏しいときは、薬剤耐性も考えます。ガイドラインは、足白癬で内服しても菌が陰性化しない場合に薬剤耐性株を考える必要がある、と述べています[1]。2026年の国内の総説では、テルビナフィン耐性の白癬菌はおよそ2%と推定されています[12]。また、熊本の一施設の爪白癬では、テルビナフィン耐性菌が2020年以降の培養陽性例の6.0%を占めていました[13]。耐性の頻度は地域や施設、対象となった症例の偏りによって異なる可能性があり、この数字を全国に当てはめることはできません。

3剤を並べると

ここまでを表にまとめます[1][6][7][8]。

薬剤 推奨度(2025) 併用禁忌 主な注意
テルビナフィン A 記載なし 肝障害・血液障害の警告。投与前と投与中の肝機能・血液検査。CYP2D6 阻害。妊婦は有益性が上回る場合のみ
イトラコナゾール B 多い CYP3A4 と P 糖蛋白の阻害。終了後も相互作用に注意。肝機能・電解質検査。うっ血性心不全。妊婦に禁忌、終了後1か月の避妊
ホスラブコナゾール A 記載なし CYP3A 阻害。ワルファリンで INR 上昇。肝機能の観察。妊婦に禁忌、終了後3か月の避妊

注:内容は各電子添文とガイドラインによる。用法及び用量、薬価は含めていない。

処方する前に確認したいポイント

これはここまでに挙げた研究と電子添文から組み立てた整理であり、この順で確認した場合の結果を検証した研究があるわけではありません。

  • 診断: 直接鏡検などで菌を確認したか[1][6]
  • 併用薬: お薬手帳で、イトラコナゾールの併用禁忌に当たる薬、ワルファリン、CYP2D6 で代謝される薬を確認したか[6][7][8]
  • 採血: 各薬剤の電子添文に沿って、投与前と投与中の検査(肝機能・血液、イトラコナゾールでは電解質)を計画したか。腎機能は背景や併用薬も踏まえて評価したか[6][7][8][9][10]
  • 既往と妊娠: 肝疾患、血液疾患、心不全、妊娠の可能性と投与後の避妊を確認したか[6][7][8]
  • 判定の時期: 「見た目の回復には新しい爪が伸びるのを待つ必要がある」ことを、開始前に患者さんと共有したか[6][7]
  • 効かないとき: 判定の時期が早すぎないか、耐性菌の可能性はないかを考えたか[1][11][12]
    これらは薬を機械的に決めるための手順ではなく、ひとつずつが「この患者さんに、この薬を、どのくらいの期間飲んでもらえるか」を考えるための手がかりとして機能します。

おわりに

爪白癬の内服3剤は、効き目の差を同じ物差しで比べた根拠が限られています。そのため実際の外来では、併用薬、肝臓や血液、妊娠の可能性といった患者側の条件で、候補がまず絞られます。ガイドライン2025も、イトラコナゾールの位置づけを、相互作用に加えて有効性やパルス療法の煩雑さも考慮して示しています[1]。

「どの薬が一番効くか」と考える前に、お薬手帳を開き、採血の予定を立て、爪が生え替わるまでの時間を患者さんと共有する。そうした準備が、3剤のどれを選ぶかを自然に決めてくれるのかもしれません。

ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。


余白ノート

この記事のために3剤の電子添文を並べて読んでみて、イトラコナゾールの併用禁忌の表の長さに改めて驚きました。抗凝固薬、睡眠薬、降圧薬、脂質異常症の薬と、皮膚科の外ではありふれた薬が並んでいます。

3剤の効き目を直接比べた根拠が限られるなか、併用薬や安全性は、選ぶうえで大切な条件になります。爪白癬は命に関わる病気ではないからこそ、その治療のために、ほかの病気の薬を止めたり変えたりすることは避けたいところです。皮膚科の処方を考えるとき、患者さんがすでに飲んでいる薬の一覧は、皮疹と同じくらい大事な所見なのかもしれません。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会(福田知雄, 原田和俊, 五十棲健, ほか). 皮膚真菌症診療ガイドライン2025. 日皮会誌 2025;135(13):2511-2566. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf
  2. Miyachi H, Sato D, Sakamaki K, Togawa Y, Yoshimura K. Impact of new antifungal medications on onychomycosis prescriptions and costs in Japan: A nationwide claims database study. J Dermatol 2024;51(9):1172-1179. doi:10.1111/1346-8138.17393
  3. 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会(望月隆, 坪井良治, 五十棲健, 石崎純子, ほか). 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019. 日皮会誌 2019;129(13):2639-2673. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/shinkin_GL2019.pdf
  4. Kreijkamp-Kaspers S, Hawke K, Guo L, Kerin G, Bell-Syer SE, Magin P, et al. Oral antifungal medication for toenail onychomycosis. Cochrane Database Syst Rev 2017;7:CD010031. doi:10.1002/14651858.CD010031.pub2
  5. Watanabe S, Tsubouchi I, Okubo A. Efficacy and safety of fosravuconazole L-lysine ethanolate, a novel oral triazole antifungal agent, for the treatment of onychomycosis: A multicenter, double-blind, randomized phase III study. J Dermatol 2018;45(10):1151-1159. doi:10.1111/1346-8138.14607
  6. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. ネイリンカプセル100mg 電子添文(2026年4月改訂 第3版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300089_6290007M1022_1_08
  7. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. イトリゾールカプセル50 電子添文(2026年8月改訂 第8版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800155_6290004M1029_1_47
  8. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. ラミシール錠125mg 電子添文(2024年7月改訂 第2版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/480866_6290005F1024_3_08
  9. Shimoyama H, Sei Y. Evaluation of Hepatic and Renal Function Algorithms for Fosravuconazole in Real-World Clinical Practice: A Retrospective Study of 128 Cases in a Dermatology Clinic. Med Mycol J 2026;67(2):97-101. doi:10.3314/mmj.25-00042
  10. Shinzato T, Nagai K, Hoshino Y, Fujiwara Y, Yamamoto Y, Ogura K, et al. Kidney injury associated with fosravuconazole L-lysine ethanolate. Clin Exp Nephrol 2025;29(4):427-432. doi:10.1007/s10157-024-02582-8
  11. Naka W, Tsunemi Y. Effects of additional oral fosravuconazole l-lysine ethanolate therapy following inadequate response to initial treatment for onychomycosis: A multicenter, randomized controlled trial. J Dermatol 2024;51(7):964-972. doi:10.1111/1346-8138.17193
  12. Noguchi H, Kano R. Clinical Management of Antifungal-Resistant Dermatophytosis in Japan. Med Mycol J 2026;67(2):125-129. doi:10.3314/mmj.26.009
  13. Ohara S, Noguchi H, Matsumoto T, Kubo M, Hayashi D, Kashiwada-Nakamura K, et al. Emerging Antifungal-Resistant Onychomycosis in a Dermatology Clinic in Kumamoto, Japan. Med Mycol J 2025;66(2):61-67. doi:10.3314/mmj.24-00028
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