医療機器がつくった新しいかぶれ――血糖センサーの接触皮膚炎をパッチテストで見つける

何が起きたか――2017年以降、発売されて間もないひとつの血糖センサーに含まれていたイソボルニルアクリレート(IBOA)によるかぶれが相次ぎ、IBOA は2020年に米国接触皮膚炎学会の「今年のアレルゲン」に選ばれた。日本でも症例が報告され、IBOA 以外の物質を調べた報告も出ている。
なぜ見落とすか――IBOA のような機器の成分は、ふだん貼る標準の試薬セット(基準シリーズ)に入っていない。スウェーデンの研究では、機器の成分にアレルギーがあった33名のうち、基準シリーズで見つかったのは2名だけだった。IBOA に陽性だった人の3分の1は、貼ってから7日目の判定で初めて陽性になった。
外来で――いま使っている機器と以前の機器、センサーの下やまわりに塗ったり貼ったりしているものを聞く。基準シリーズに機器の成分(IBOA は0.3%、ワセリン基剤)を加え、貼ってから7日目にも判定する。かぶれは機器をやめる原因になり、血糖値の測定の精度とも関係しうるため、結果を内科と共有する。
[1][2][3][9][16][17]
はじめに
糖尿病内科から、「血糖を測るセンサーを貼っているところが赤くかゆくなる」という患者さんが紹介されてきました。センサーを外すと治りますが、貼るとまた出ます。パッチテスト(patch test)で基準シリーズ(baseline series)を貼ってみたものの、関係のありそうな陽性は出ませんでした。刺激性の皮膚炎として返事を書いてよいのか。こうした場面で手が止まってしまうことがあるかもしれません。
この皮疹と関連のある事例として、2017年以降、ひとつの血糖センサーによるアレルギー性接触皮膚炎が相次いだことがあります[3][5]。このセンサーに含まれていた物質は多くの使用者を感作し、それまでパッチテストではほとんど陽性にならなかったにもかかわらず、数年のうちに主要なアレルゲンのひとつになりました[3]。原因の物質は製品の表示からは分からず、皮膚科医が機器の部材から成分を溶かし出し、化学分析で突き止めたものでした[3][5][6]。
本稿では、この事例の経緯と日本での報告をたどったうえで、2026年に出たスウェーデンの研究[1][2]をもとに、センサー接触部の皮疹を前にしたときに何を聞き、何を貼り、いつ判定するかを考えます。
背景知識
皮膚に貼り続ける医療機器
1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)の治療では、持続血糖測定(continuous glucose monitoring: CGM)の機器や、持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion: CSII)に使うインスリンポンプが広く使われています[2][3]。どちらも強い接着剤で皮膚に固定し、3日から、長いものでは14日ほど貼り続けます[3]。
総説は、この長い貼付時間と、接着剤に含まれるアクリレート(アクリル樹脂の原料となる物質の総称で、IBOA もその一つ)が、感作を起こしやすくしていると指摘しています[3]。また、刺激性接触皮膚炎(irritant contact dermatitis)で皮膚のバリアが傷むとアレルゲンが免疫系に取り込まれやすくなり、アレルギー性接触皮膚炎(allergic contact dermatitis)の発症を後押しする可能性も考えられています[3]。
皮疹の特徴
総説がまとめた皮疹の特徴は、次のとおりです[4]。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 範囲 | 接着部に一致するか、そのまわりにわずかに広がる程度 |
| 形 | 境界のはっきりした紅斑、かゆみ、軽い腫れ、鱗屑。水疱やびらんを伴うこともある |
| 発症までの期間 | 使い始めて5〜7か月ほどが多い。数週から数年まで幅がある |
| 経過 | 機器を外すと1週間ほどで治ることが多い。色素沈着が残ることがある |
ただし総説は、見た目だけではアレルギー性と刺激性を区別できないとしています[4]。区別にはパッチテストが必要です。
ひとつのセンサーから始まった流行
機器を分析して見つけたアレルゲン
2017年、ベルギーとスウェーデンの皮膚科医が、発売されて間もない血糖センサーによるアレルギー性接触皮膚炎15例を報告しました[5]。本稿では、このセンサーを「初代のセンサー」と呼びます(のちに IBOA を除いた次の世代の製品が出ています)。センサーの接着部をパッチテストで貼ると全員が陽性になり、イソボルニルアクリレート(isobornyl acrylate: IBOA)を貼った13名のうち12名が IBOA に陽性でした[5]。センサーをガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatography-mass spectrometry: GC-MS)で調べると、IBOA が検出されました[5]。
なぜ化学分析までする必要があったのでしょうか。総説によると、医療機器の製造元には製品の化学組成を開示する義務がありません[3]。化粧品や医薬品であれば表示から成分をたどれますが、初代のセンサーでは、最初の症例が出た時点で、接着部にも本体にも何が含まれているかの情報がなかったのです[3]。総説が紹介するその後の分析では、IBOA は接着部(0.006%)だけでなく、センサーの本体(部位により0.003〜0.3%)にも含まれていました[3]。
成分が分からないことは、診断の遅れにもつながりました。デンマークの施設が2015〜2019年にセンサーやポンプのかぶれでパッチテストを行った38名(うち30名、78.9%が子ども)では、製造元からの情報は得にくく、得られても不十分でした。そのため、12名(31%)では診断までに1年半以上かかっていました[6]。
「今年のアレルゲン」になるまで
IBOA は、一般のパッチテストではまれにしか陽性になりません。総説が紹介するベルギーの大学病院の研究では、522名中3名(0.57%)が陽性で、3名とも糖尿病の機器で感作された人でした[3]。ところが、センサーによる症例は数年のうちに急増し、IBOA は2020年に米国接触皮膚炎学会(American Contact Dermatitis Society)の「今年のアレルゲン(Allergen of the Year)」に選ばれました[3]。
製造元によると、初代のセンサーも、2020年7月31日以降に製造されたものには IBOA が含まれていません[3]。日本の研究グループは、センサーから皮膚に届く IBOA の量を見積もっています。IBOA を含んでいた初代のセンサーでは、感作を起こさないと見積もられる量のおよそ17倍でした。その後継にあたる次の世代のセンサーでは、IBOA は測定できる下限(定量下限)より少なく、定量下限の量が含まれていると仮定して多めに見積もっても、感作を起こさないと見積もられる量の約70分の1にとどまりました[8]。成分が変わったことで、皮膚が受ける量は大きく減ったと考えられます[8]。
流行は終わっていない
IBOA が除かれたあとも、ほかの機器からは別のアレルゲンが見つかり続けています[2][3][7]。総説には、2020年初めから IBOA とは別のアクリレート(2,2′-methylenebis(6-tert-butyl-4-methylphenol) monoacrylate: MBPA)を使うようになった機器があることも記載されています[3]。ベルギーの施設は、初代のセンサーとは別の会社のセンサーから、IBOA のほかにも、別のアクリレートやイソシアネートなど複数の感作物質を報告しました[7]。2026年のスウェーデンの研究では、これまで機器の原因として報告されていなかった物質も見つかっています[2]。
もう一つ大切なのは、以前の機器で感作されると、次の機器でも皮膚炎が出うることです。ベルギーの報告では、この別の会社のセンサーを使っていて IBOA やN,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethylacrylamide: DMAA)に陽性だった人は、全員が以前に初代のセンサーで感作されていました[7]。はじめからこの会社のセンサーを使っていた人には、この2つへの感作は見られませんでした[7]。すでに感作された人では、新たに感作が起こるのに必要な量より少ない量でも皮膚炎が出ることが指摘されています[2]。
日本では
同じ機器が使われ、症例が報告されている
日本でも、初代のセンサーと同じ製品群のセンサーが使われています[14]。2019年以降、皮膚科と小児科・内科から、次のような報告が出ています。
| 報告 | 内容 |
|---|---|
| Mine 2019[9] | 8歳の女児。センサーの接着部と IBOA に陽性。IBOA は0.1%から0.01%まで薄めても、どの濃度でも陽性。判定は貼ってから48時間・72時間・7日 |
| Shinkawa 2019[10] | 成人の IBOA による接触皮膚炎。被膜剤(皮膚の表面に薄い膜を作る製品)が役立ったとする症例報告 |
| 大原 2020[11] | 2週間ごとに付け替える型のセンサーで、使い始めて約9か月後から装着部に紅色丘疹と紅斑 |
| 岩渕 2020[12] | 3例。2例で部材ごとにパッチテストを行い、接着テープの IBOA を原因と特定。同じ施設でこの製品群のセンサーを使っていた15名のうち、ほかに2名に紅斑とかゆみ |
| 飯島 2021[13] | 使い始めて2か月後から接着テープの部位にかゆみ。貼る予定の部位にステロイド外用薬を塗ってから貼っていたが、かゆみが続いた |
内科の側から見えているもの
糖尿病の診療の側からも、かぶれが血糖管理に影響することを示すデータがあります。
呉医療センターの1型糖尿病の外来患者さん55名では、23名(42%)に、この製品群のセンサーによる接触皮膚炎の既往が診療録に記録されていました[14]。この研究はパッチテストをしておらず、刺激性とアレルギー性の両方を含んだ数字です[14]。著者らは、日本で提供される製品が2020年に IBOA を含まないものに改良されたと記していますが、詳細は公表されていないとしています[14]。また、接触皮膚炎の既往のある人で血清亜鉛が低かったと報告していますが、関連を示したにとどまります[14]。
国内の多施設の無作為化クロスオーバー試験(ISCHIA 試験)の事後解析では、接触皮膚炎のある人で、センサーの値のずれが大きくなっていました[16]。ずれの指標は平均絶対相対誤差(mean absolute relative difference: MARD)で、センサーの値が指先で測った血糖値から平均して何%離れているかを表し、大きいほど精度が低いことを意味します。MARD は、接触皮膚炎のない人で15.0%、ある人で27.4%でした[16]。著者らは、接触皮膚炎が測定精度の低下と関係している可能性を挙げています[16]。かぶれは皮膚だけの問題にとどまらず、血糖値の読み方にまで影響しうるということです。
インスリンポンプでも同じ悩みがあります。ポンプを使う子ども8名を調べた看護の研究では、テープかぶれとかゆみが多く見られ、かぶれのある子どもでは角層の水分量が低くなっていました[15]。
日本でも、別の会社の機器から別の物質が
2026年の日本毒性学会では、国内ではそれまで皮膚炎の報告がなかった会社の血糖センサーについて、アレルギー性接触皮膚炎の原因を化学分析で調べた発表がありました[17]。皮膚に触れる部材から酸化防止剤や接着剤の原料などが検出され、パッチテストでは MBPA と IBOA に陽性でした[17]。MBPA は、海外で皮膚炎を起こした機器に含まれていたのと同じくらいの濃度で含まれており、演者らは MBPA が原因の可能性があるとしています[17]。日本でも、IBOA 以外の物質の関わりを調べた報告が出てきたことになります。ただし学会の要旨での報告のため、詳しい内容は確かめられていません。
何を加えれば見つかるか
スウェーデンの研究
この研究は2部に分けて発表されています。第1部は基準シリーズの結果[1]、第2部は機器の成分の結果と、パッチテストで貼る試薬の推奨です[2]。2021〜2022年に南スウェーデンの糖尿病外来2施設で、機器を使う1型糖尿病の成人を、皮疹の有無にかかわらず招いてパッチテストを行いました[1][2]。204名のうち114名(55.9%)は機器で皮疹が出たことがあり、90名は出たことがありませんでした[1]。比較の対象は、同じ時期にパッチテストを受けた皮膚炎の患者さん1,382名です[1]。
貼ったのは、スウェーデンの基準シリーズ(29種)と、機器から見つかった物質などを集めた医療機器シリーズ(58種)で、判定は貼ってから3日目か4日目と、7日目に行いました[1][2]。
基準シリーズでは差がつかなかった
基準シリーズのどれかに陽性だったのは、糖尿病の参加者で34.3%、皮膚炎の患者さんで39.6%で、差はありませんでした(年齢と性別で調整した P = 0.30)[1]。一方、IBOA(0.3%で貼付)に陽性だった人は、糖尿病の参加者で9.8%、皮膚炎の患者さんで0.2%で、大きく違いました[1]。IBOA はスウェーデンの基準シリーズには含まれていません[1]。
機器の成分へのアレルギーは、基準シリーズではほとんど見つからない
機器から実際に見つかったことのある物質に陽性だったのは、機器で皮疹が出た人で28.1%、出なかった人で1.1%でした[2]。皮疹が出て陽性だった32名のうち30名は、皮疹が出た機器に含まれる物質に陽性でした[2]。
皮疹のなかった陽性者を合わせた33名について、どこまで試薬を貼れば見つかったかを見ると、次のようになります[2]。
| 貼った試薬 | 見つかった人数(33名中) |
|---|---|
| 基準シリーズだけ | 2名(6.1%)。いずれもコロホニウム |
| 基準シリーズ + 市販のパッチテスト試薬にある機器のアレルゲン | 20名(60.6%) |
| さらに施設で調製したアレルゲンを加えて、初めて見つかった | 13名(39.4%) |
2行目の20名には、1行目の2名が含まれます。つまり、市販の試薬まで貼れば20名、施設で調製したものまで貼って初めて残りの13名が見つかった、ということです[2]。
濃度と判定日
IBOA に陽性だった21名のうち、10名は低い濃度では陽性にならず、0.3%(ワセリン基剤)で初めて陽性になりました[2]。また、7名(33.3%)は7日目の判定でだけ陽性でした[2]。著者らは、IBOA は0.3%で貼り、3日目か4日目に加えて7日目にも判定することが欠かせないとしています[2]。
生活への影響
機器で皮疹が出たことがあり、質問紙に答えた人どうしで比べると、機器の成分に陽性だった人は陰性だった人よりも、皮疹のために機器をやめたことがある割合(37.5%と13.8%)と、機器を交換する頻度を増やした割合(56.3%と27.5%)が高くなっていました[2]。
報告を解釈する上での注意
-
- 機器: スウェーデンで使われていた機器での結果で、参加者の9割以上が初代のセンサーを使っていた[2]
- 参加者: 参加した人は参加しなかった人より皮疹のあった割合が高く(55.9%と40.0%)、陽性率を高く見積もっている可能性がある[2]
- 成分: 機器の成分がすべて分かっているわけではなく、陽性率を低く見積もっている可能性もある[2]
- 方法: 参加者自身の機器は貼っていない[2]
センサー接触部の皮疹を前にしたら
以下は、ここまでに挙げた研究と総説から組み立てた提案です。この手順で診療した場合の結果を検証した研究はなく、原因の特定を保証するものでもありません。見落としを減らすための最小限の確認として示します。
聞くこと
まず、いま使っている機器の種類と、いつから使っているかを聞きます。皮疹が出るまでには数週から数年の幅があります[4]。
次に、以前に使っていた機器を聞きます。以前の機器で感作された人は、成分の重なる別の機器でも皮疹が出ることがあります[7]。総説も、機器を替えれば解決することはあるものの、同じアレルゲンや交差反応する物質が含まれていることがあり、確実ではないとしています[4]。
そして、センサーの下やまわりに塗ったり貼ったりしているものを聞きます。総説が紹介する、機器のかぶれのある子ども15名の報告では、剥離剤のワイプ、局所麻酔薬の貼付剤やクリーム、ハイドロコロイド、粘着包帯にパッチテストで陽性だった子どもがいました[3]。これらの陽性が皮膚炎の原因だったかまでは記載されていませんが、機器を貼るときやはがすとき、かぶれを防ぐために使うものも、新たなアレルゲンになりうることを示しています[3]。
予防のために塗ったものが、かぶれを抑えるとも限りません。日本の症例では、貼る前にステロイド外用薬を塗っていても、かゆみが続いていました[13]。英国の規制当局は、センサーの下にクリームやスプレー、パッチを使うと機器の性能が損なわれうるとして、使うことを勧めていません[18]。
貼ること、判定すること
基準シリーズに加えて、機器のアレルゲンと、できれば本人の機器を貼ることを考えます[2][4]。スウェーデンの研究の著者らは、研究で貼った58種とは別に、今後のパッチテストで使う30種の医療機器シリーズを勧めています。そこには IBOA 0.3%(ワセリン基剤)を含むアクリレート、イソシアネート、コロホニウムの関連物質などが並び、あわせて本人の機器の接着部をそのまま貼ることと、機器の抽出液を貼ることも勧めています[2]。この30種のうち12種は市販されておらず、施設での調製が必要です[2]。施設で調製する試薬や機器の抽出液は、濃度や基剤、刺激性の見極めが必要なため、パッチテストに慣れた施設で扱うものです[4]。日本でどれが手に入るかは、それぞれの施設で確かめる必要があります。
判定は、3日目か4日目に加えて7日目にも行います[2][4]。
陰性だったときも、すぐに刺激性と決めつけないようにします。総説は、7日目に判定していない、IBOA を0.1%でしか貼っていない、本人の機器を貼っていない、といった偽陰性の理由を先に除くよう求めています[4]。
内科への返事
かぶれは、機器の中断や交換の増加につながり[2]、測定精度の低下とも関係している可能性があります[16]。返事には、陽性だった物質の名前と、それが以前の機器を含めてどの機器で問題になりうるかを書き、次の機器を選ぶ材料として内科と共有しておきたいところです[2][7]。皮膚を保護するさまざまな工夫については、総説は、多くは十分な効果が得られず、一時しのぎにとどまるとしています[4]。
なお、機器で皮疹が出たことのない人に、予防のためにパッチテストを勧めることはできないとされています[1][2]。
確認したいポイント
ここまでの内容を踏まえ、医療機器を貼っている部位の皮疹を前にしたときに確かめたい点を並べます。
- いまの機器: 何を、いつから貼っているか[4]
- 以前の機器: 以前に別の機器で皮疹が出ていないか[7]
- 下やまわりのもの: 保護材、剥離剤、テープ、塗り薬を使っていないか[3][18]
- 皮疹の範囲: 接着部に一致しているか[4]
- 貼る試薬: 基準シリーズだけで終えていないか。IBOA を0.3%(ワセリン基剤)で貼ったか。本人の機器を貼ったか[2]
- 判定日: 3日目か4日目に加えて、7日目にも判定したか[2][4]
- 陰性のとき: 偽陰性の理由を除く前に、刺激性と決めていないか[4]
- 内科への返事: 陽性の物質名と、血糖管理への影響を共有したか[2][16]
センサーの外にも
医療機器による接触皮膚炎は、糖尿病の機器に限りません。手術の傷を閉じる2-オクチルシアノアクリレート(2-octyl cyanoacrylate)の皮膚接着剤もその一つです。
| 研究 | 対象 | 接触皮膚炎の頻度 |
|---|---|---|
| Park 2021[19] | 韓国、皮膚接着剤で閉創した1,145名 | 2-オクチルシアノアクリレート2.7%、n-ブチルシアノアクリレート2.2% |
| Chalmers 2017[20] | 米国、整形外科の待機手術 | 約0.5%。診断は術後平均11.8日 |
| Kow 2026[21] | シンガポール、膝の人工関節手術290名 | 6.6%(術後平均21日)。以前に同じ接着剤を使ったことがあると起こりやすい(調整オッズ比3.12) |
術後1〜3週で創のまわりに出る皮疹は、創部感染と見分ける必要があります。米国とシンガポールの研究では、創の治りや人工関節の感染について、大きな悪化は報告されていませんでした[20][21]。シンガポールの研究で、以前に同じ接着剤を使ったことが危険因子だったことは、医療機器そのものが感作のきっかけになりうることを示しています[21]。
おわりに
ひとつの血糖センサーに含まれていた IBOA は、それまでほとんど話題にならなかった物質から、数年で「今年のアレルゲン」になりました。その原因は製品の表示からは分からず、皮膚科医が機器を分析して突き止めたものでした。そして IBOA が除かれたあとも、別の機器から別の物質が見つかり続けています。
センサー接触部の皮疹は、基準シリーズを貼るだけでは原因が見えてこないことがあります。いまの機器と以前の機器、センサーの下やまわりで使っているものを聞き、その人が触れてきたものを貼る試薬に加える。そうした一手間をかけることで、刺激性と書く前に立ち止まり、内科と一緒に次の機器を選ぶ手がかりが得られるのではないでしょうか。ここで挙げた確認は原因の特定を保証するものではなく、見落としを減らすための最小限のものです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。
余白ノート
総説の中に、「接触する物の中のアレルゲンは、化粧品や医薬品、家庭用品なら表示から、工業製品なら安全データシートから、たどれることが多い」という一文がありました[3]。その直後に、医療機器の製造元には組成を開示する義務がない、と続きます[3]。
パッチテストで何を貼るかを決めるとき、私たちはふだん、成分表を手がかりにしています。その手がかりがない機器では、患者さんが話す「何を、いつから、どこに貼っているか」と、症例を積み重ねた報告が、成分表の代わりになります。問診での何気ない一言が、まだ誰も名前を挙げていない次のアレルゲンを見つける糸口になるかもしれません。そう思うと、センサーの下の小さな皮疹も、少し違って見えてきます。
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- Ulriksdotter J, Mowitz M, Sukakul T, Bruze M, Hamnerius N, Svedman C. Patch testing in individuals with diabetes using medical devices. Part 2—contact allergy to medical device allergens and new patch test recommendations. Contact Dermatitis 2026;95(2):169-181. doi:10.1111/cod.70149
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