シクロスポリンをどう始め、どう見守るか――5つの皮膚疾患で導入・調整・監視を整理する
Take Home Message
次の診察でシクロスポリンの導入を検討するときは、疾患ごとの国内での位置づけと用量の根拠を確認し、開始前評価、服用条件、再評価時期、減量・休薬・中止の方針まで決める。
適応外の慢性特発性蕁麻疹・掌蹠膿疱症・壊疽性膿皮症では、文献上の数値を国内の標準開始量として扱わない。
[1][2][3][4][5][6][8]
次の診察で確認する5疾患の位置づけと開始量
| 疾患 | 国内での位置づけ | 直接資料にある開始量・用量域 | 次の診察で確認すること |
|---|---|---|---|
| 乾癬 | 国内承認。尋常性乾癬は皮疹が全身の30%以上または難治性の場合。膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎も対象 | 通常、1日量5 mg/kgを2回に分ける(国内承認用量) | 承認対象に該当するかを確認し、ベースラインを記録したうえで、効果が得られた後の減量計画まで決める |
| 成人アトピー性皮膚炎(AD) | 国内承認(対象条件あり)。国内ガイドラインでは16歳以上の最重症例に位置づける | 3 mg/kg/日を2回に分ける。5 mg/kg/日を超えない(国内承認用量) | 既存治療で十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上に及ぶことを確認し、8週時点の中止判断と1治療期間を12週以内とする方針を決める |
| 慢性特発性蕁麻疹(CSU) | 適応外。国内ガイドラインでは後方治療として提案し、保険適用外と記載 | 国内ガイドラインに開始量の記載はない。2026年国際ガイドラインは3–5 mg/kg/日を示す | 承認治療への反応と生活の質(QOL)の障害を確認し、適応外使用であることを説明する。国外用量域を国内標準として処方しない |
| 掌蹠膿疱症(PPP) | 適応外。国内手引きは推奨度B・エビデンスレベルII、保険適用なしと記載 | 国内手引きは1.0 mg/kg/日程度から開始し漸増する方法を示す | 根拠が旧製剤サンディミュンの試験であることを説明し、現行ネオーラルの確立した開始量として扱わない |
| 壊疽性膿皮症(PG) | 適応外。国内手引きは推奨度A | 国内手引きは3–5 mg/kgと記載。STOP GAP試験はネオーラル4 mg/kg/日を2回に分ける試験開始量 | 国内手引きと英国のランダム化比較試験(RCT)の数値を区別し、反応・毒性・中止の判断方法を個別に決める |
表の根拠: [1][2][3][4][5][6][8]
注:乾癬・成人ADは国内承認用量、CSUは国外ガイドラインの用量域、PPPは旧製剤試験に基づく国内手引きの記載、PGは国内手引きと英国RCTの数値です。同じmg/kg表記でも、根拠と国内での扱いは異なります。PGの国内手引きにある3–5 mg/kgは原文どおりで、「/日」を補っていません。
はじめに
症例カンファレンスで、指導医が「シクロスポリンを始めましょう」と提案する場面に出会うことがあります。ところが処方画面を開くと、開始量だけでなく、1日何回に分けるか、食事とどう合わせるか、どの検査を確認するかという問いが次々に続きます。
同じ薬剤が複数の皮膚疾患に登場しても、資料に示される数値の性質は同じではありません。国内の承認用量もあれば、国内ガイドラインが適応外使用について述べた記載、旧製剤で得られた試験値、国外のランダム化比較試験(randomized controlled trial: RCT)における開始量もあります。これらを数字だけ横並びにすると、出所の違いが見えなくなり、かえって判断を誤るおそれがあります。
そこで本稿では、乾癬(psoriasis)、成人アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis: AD)、慢性特発性蕁麻疹(chronic spontaneous urticaria: CSU)、掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis: PPP)、壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum: PG)の5疾患を取り上げます。シクロスポリンの導入を、①適応と位置づけ、②開始前評価、③処方条件、④反応・毒性の再評価、⑤減量・休薬・中止の計画、という5つの軸で整理します。なお、蕁麻疹については慢性特発性蕁麻疹を念頭に置き、急性蕁麻疹や刺激誘発型蕁麻疹は、本稿では基本的に扱いません。
シクロスポリンを始める前の前提
シクロスポリン(ciclosporin)はカルシニューリン阻害薬です。本稿で扱うネオーラルはマイクロエマルジョン製剤で、旧製剤のサンディミュンとは吸収特性が異なります。そのため、旧製剤を用いた試験値を、現行ネオーラルの標準手順へそのまま読み替えることはできません。[1][4]
用量を決める前に、適応、薬物曝露に影響する条件(食事・製剤・相互作用など)、そして開始後の変化と比べるための出発点(ベースライン)を確認しておくことが重要です。 国内電子添文は、吸収に個人差があること、必要に応じて血中濃度を測定すること、腎・肝・膵機能障害、感染症、血圧上昇などに注意することを求めています。[1]
また、「国内ガイドラインで選択肢として挙げられていること」と「薬事承認があること」は同じではありません。保険上の扱いや個別の請求可否も、これらとは別の論点です。本稿では、薬事承認、ガイドライン上の位置づけ、保険に関する記載を、それぞれ分けて扱います。

この5軸は、一方向に進むだけではありません。反応や毒性を再評価した結果、処方条件を見直すこともあります。そして効かなかった後や副作用が出た後ではなく、開始前から出口(減量・休薬・中止)を考えるべきです。
適応と位置づけ
最初の軸は、その疾患でシクロスポリンを検討する理由と、国内での位置づけを確認することです。ここでは用量の検討を急がず、治療対象・既治療・国内承認の有無を整理します。
乾癬では、尋常性乾癬のうち皮疹が全身の30%以上に及ぶ場合または難治性の場合に加え、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎が国内承認の対象です。[1]
ADでは、既存治療で十分な効果が得られない患者さんが効能・効果の対象です。電子添文は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などで十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上に及ぶ患者さんへ対象を限定しています。国内ガイドラインは、16歳以上の最重症例における位置づけを示しています。[1][2]
ADに対する投与は、治療に精通した医師のもとで行います。電子添文の警告に従い、患者さんまたはご家族へ有効性と危険性をあらかじめ十分に説明し、理解を確認したうえで開始します。[1]
一方、CSU、PPP、PGは、ネオーラル電子添文の効能・効果には含まれません。したがって、これら3疾患での使用は適応外です。[1]
国内蕁麻疹診療ガイドラインは、抗ヒスタミン薬、補助的治療薬、オマリズマブ、デュピルマブによる治療後も生活の質(quality of life: QOL)の障害が強いCSUなどで、シクロスポリン治療を提案しています。推奨の強さは2、エビデンスの強さはAですが、これは国内承認用量を示す推奨ではありません。同ガイドラインは、蕁麻疹に対する使用を保険適用外と記載しています。[3]
PPPの国内手引きは、治療薬の一つとして推奨度B・エビデンスレベルIIとし、PGの国内手引きはシクロスポリンを推奨度Aとしています。ただし、いずれも薬事承認を意味しません。PPPについては、手引きに保険適用がない旨も明記されています。[4][5]
適応外使用では、位置づけ・期待する利益・危険性・代替治療を説明し、個別に判断します。 ガイドラインに保険適用外という記載があることと、個別の請求可否とは同じではありません。ガイドライン上の推奨だけをもって、個別の使用や請求を自動的に決めることはできません。
開始前評価
第2軸は、処方前のベースラインを確認することです。検査項目を機械的に並べるのではなく、投与を検討できる状態か、そして開始後の変化を何と比較するかを整理します。
まず、診断・重症度・既治療・代替治療を確認します。特に適応外使用では、シクロスポリンを選ぶ理由と期待する治療目標を、診療録上でも明確にしておく必要があります。
次に、電子添文の禁忌と併用薬を照合します。過敏症歴、生ワクチン、タクロリムス(外用剤を除く)、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ボセンタン、アリスキレン、ペマフィブラートなどは、重要な確認項目です。肝障害または腎障害があり、コルヒチンを服用している場合も禁忌です。相互作用の記載は改訂されうるため、処方時点で最新版を確認します。[1]
ベースラインとして、血圧、血算、クレアチニン、BUN、ビリルビン、AST、ALT、アミラーゼ、尿検査を確認します。腎機能は単回の値だけに頼らず、変動も踏まえて開始後と比較できるように記録します。電解質、尿酸、脂質、感染症検査などは、併存症・併用薬・感染リスクに応じて検討します。なお、国内電子添文は管理中に行う検査を示していますが、5疾患に共通する「開始前必須セット」を一括して規定しているわけではありません。開始前評価の参考には、複数回の腎機能測定を示す国外の安全使用ガイドラインも利用できますが、その回数を国内の固定手順として扱うことはできません。[1][7]
開始前には、現在または予定しているソラレン長波長紫外線療法(psoralen ultraviolet A: PUVA)を含む紫外線療法と、過去の照射歴、とくに長期PUVA療法歴を確認します。紫外線療法とシクロスポリンによる免疫抑制が重なると、皮膚癌発現リスクが高まる可能性があるためです。
国内電子添文は、PUVAを含む紫外線療法との併用で皮膚癌発現リスクが高まる可能性を示し、やむを得ず併用する場合は皮膚癌・前癌病変の定期的な観察を求めています。また、長期PUVA療法を受けた乾癬・ADの患者さんでは、本剤投与時に皮膚癌発現リスクが増大する可能性にも注意が必要です。[1]
英国ガイドラインはより厳しく、紫外線B波(ultraviolet B: UVB)・PUVAとの同時併用を避け、相当量の紫外線療法歴がある場合には慎重に判断するよう求めています。[7]
開始前に確認したいポイント
開始前評価(第2軸)では、前後の軸とのつながりも含め、次の7点を確認します。
- 適応と位置づけ: 診断、重症度、既治療、代替治療、国内承認の有無を確認する
- 禁忌: 過敏症歴、禁忌薬、生ワクチン、肝・腎障害下でのコルヒチン併用を照合する
- 併存症: 腎・肝機能障害、高血圧、感染症、悪性腫瘍、神経学的リスクを評価する
- 併用と曝露: 相互作用薬、腎毒性薬、カリウム関連薬、食品・食事条件、製剤、現在・予定しているPUVA療法を含む紫外線療法、長期PUVA療法歴を確認する
- ベースライン: 血圧、血算、腎・肝・膵機能、尿検査を、開始後と比較できる形で残す
- 治療目標: 何をもって反応ありと判断するかを、疾患ごとに定める
- 出口: 無効時、有害事象発生時、予定期間終了時の減量・休薬・中止方針を、先に考えておく
これらは単なる検査セットではなく、一つひとつが処方の可否と再評価の基準として機能します。ただし、5疾患に共通する開始前必須セットを規定するものではありません。
処方条件
第3軸では、疾患ごとのシクロスポリンの位置づけと開始前評価を踏まえて、用量・製剤・分割・食事条件・相互作用をまとめて決めます。
冒頭の表で確認した数値を、疾患ごとの直接資料に沿って処方へ落とし込みます。国内承認用量、国外ガイドラインの用量域、旧製剤試験、国外RCTの試験開始量は、同じように扱える数値ではありません。
乾癬
乾癬の数値は国内承認用量です。開始後は有効性と安全性をみながら調整し、効果がみられた場合の減量手順も電子添文に記載されています。一方、電子添文にない一律の増量幅や固定した再診間隔を、独自に補うことはできません。[1]
アトピー性皮膚炎
ADでは、表に示した国内承認上の期間と中止判断を、開始前から出口の計画へ組み込みます。症状が軽快したら一般的な外用治療への切り替えを考え、長期使用が必要な場合は、国内ガイドラインの間欠投与に関する記載も確認します。[1][2]
以下は、承認用法とは異なる国内ガイドラインの補足です。 同ガイドラインには、1日1回食前という代替的な服用法への言及があります。ただしこれは、国内電子添文の承認用法である1日2回投与と同義ではありません。また、乾癬の薬物動態研究を背景とする提案であり、AD以外の4疾患へ一般化することはできません。採用する場合は、専門医が承認用法との差を説明し、薬物曝露の変化も含めて慎重に判断する必要があります。[1][2]
慢性特発性蕁麻疹
CSUで使用を検討する際は、表の位置づけを踏まえ、なぜ他の治療ではなく適応外のシクロスポリンを選ぶのかを整理し、治療目標と再評価の方法を明確にします。国際ガイドラインに用量域の記載があっても、それをそのまま国内の開始手順とすることはできません。[3][6]
掌蹠膿疱症
PPPでは、表にある低用量開始・漸増の記載を、現行ネオーラルの確立した手順としてではなく、旧製剤を用いた小規模試験に由来する数値として読みます。開始量や調整法は試験プロトコルに由来するため、具体値だけを抜き出して標準的な開始量と理解しないことが重要です。[4]
壊疽性膿皮症
PGの国内手引きにある3–5 mg/kgは、単位を原文どおり示しており、本稿では「/日」を補っていません。STOP GAP試験では、ネオーラル4 mg/kg/日を1日2回で開始し、試験内で通常診療に応じた用量調整と上限が設定されていました。これは英国のRCTで用いられた試験プロトコルであり、国内での標準的な開始・増減・中止手順を検証した数値ではありません。[5][8]
製剤・食事・相互作用を固定する
国内電子添文における乾癬・成人ADの承認用法は1日2回投与であり、食事との関係は用法・用量に指定されていません。ただし、服用時刻や食事条件を途中で変えると、血中濃度や安全性評価の解釈が難しくなります。処方時に製剤・服用回数・服用時刻・食事との関係を決め、再評価時にも変更の有無を確認します。[1]
相互作用は、シクロスポリンの血中濃度を上げ下げする薬だけではありません。腎毒性を重ねる薬、高カリウム血症を起こしやすくする薬、併用禁忌薬、そしてPUVAを含む紫外線療法も確認します。薬剤名を記憶に頼るのではなく、毎回、最新の電子添文と相互作用情報へ戻る方が安全です。[1]
反応・毒性の再評価
第4軸は、治療効果と安全性を併せて判断することです。有効性だけを追うと毒性の発見が遅れ、検査値だけを追うと治療を続ける意味が曖昧になります。
疾患の反応は、開始前に定めた目標に沿って確認します。それと同時に、血圧、感染徴候、神経症状、腎・肝・膵機能、血算、尿所見を追います。国内電子添文は、血球数算定、クレアチニン、BUN、ビリルビン、AST、ALT、アミラーゼ、尿検査などを頻回に行い、血圧を定期的に測定するよう求めています。ただし、この「頻回」「定期」を、根拠なく全施設共通の固定日程へ置き換えることはできません。[1]
検査頻度は、次の4つの層に分けて考えると混同を減らせます。
- 国内電子添文の直接記載: 臨床検査は頻回、血圧は定期
- 適応別の血中濃度記載: 乾癬・ADでは1か月に1回を目安とすることが望ましい
- 国外の運用例: 開始前評価や数値による調整基準は国内標準ではなく、参考情報として扱う
- 施設での実装: 患者さんのリスク、初期値、用量変更、併用薬変更に応じた院内手順を確認する
乾癬・ADについては、電子添文が副作用予防のために月1回を目安とした血中トラフ値(trough level)測定を示しています。この記載を、適応外であるCSU・PPP・PGへ自動的に当てはめることはできません。 ただしこれは、適応外使用では血中濃度測定が不要という意味ではなく、その必要性と採血条件を個別の管理計画で定めるという意味です。また、採血値を比較する際は、服用と採血の時間関係、食事条件、製剤、併用薬が前回測定時から変更されていないかも確認します。[1]
国外には、皮膚科診療でのルーチンのトラフ測定を支持しないガイドラインもあります。この相違は、国内電子添文の記載を弱めるものではありませんが、血中濃度だけで継続可否を決めず、臨床反応・毒性・相互作用・服薬状況と合わせて解釈する必要があります。[7]
クレアチニン上昇、血圧上昇、著しい肝・膵機能異常がみられた場合は、変化の大きさ、症状、併用薬、基礎疾患を含めて継続可否を速やかに再検討します。ここで一律の数値閾値を作るのではなく、患者さんごとのベースラインと経過に照らして判断します。[1][7]
定期評価を待たない兆候
新たなけいれん、意識変容、視覚障害などの重大な神経症状や、重篤な感染症が疑われる場合は、定期評価を待たず直ちに評価します。 休薬・中止を含む対応は、最新の国内電子添文と患者さんの状態に基づいて判断し、必要な専門的対応へつなげます。[1][7]
減量・休薬・中止の計画
第5軸は、開始前に想定した出口を、反応と毒性に応じて具体化することです。開始時の用量を漫然と固定せず、疾患別の直接資料と個々の反応・毒性に照らして継続量を考えます。
乾癬では、効果がみられた場合に1か月ごとに1日量を1 mg/kgずつ減量し、1日量3 mg/kgを標準維持量とする手順が電子添文にあります。症状により適宜増減しますが、この記載を他疾患の減量法へ流用することはできません。[1]
ADでは、8週間で改善がなければ中止し、1治療期間は12週間以内を目安とします。国内ガイドラインは、症状軽快後の外用治療への切り替えと、長期使用が必要な場合に2週間以上の休薬期間を挟む間欠投与を示しています。[1][2]
CSU・PPP・PGでは、採用した国内資料からは、5疾患に共通して使える具体的な増減幅や終了手順を確認できません。したがって、疾患の反応・毒性・治療目標・代替治療をもとに個別に計画し、他疾患の承認用法や国外資料の閾値を用いて、根拠のない手順を補わないことが大切です。[3][4][5][6][8]
継続・減量・休薬・中止を考えるポイント
- 適応と位置づけ: 期待した臨床的利益が得られ、使用を続ける理由があるかを確認する
- 開始前評価: ベースラインから腎機能・血圧・血算・肝・膵機能・尿所見がどう変化したかを確認する
- 処方条件: 用量・製剤・服用条件・食事条件・併用薬の変化が、反応や毒性を説明しないかを確認する
- 反応・毒性の再評価: 有効性と安全性を同時に比較し、継続の利益が上回るかを考える
- 減量・休薬・中止の計画: 直接資料にある手順を疾患ごとに用い、ない手順は独自に補わない
- 感染症・神経症状: 重篤な兆候があれば、定期評価を待たず直ちに評価する
- 予定期間と代替案: 漫然と継続せず、次の治療や外用療法への移行を考える
これらは終了時だけに見る項目ではなく、次の処方を決めるたびに立ち返る判断点です。
おわりに
シクロスポリンの導入では、疾患名から用量を選ぶだけでは足りません。適応と位置づけ、開始前評価、処方条件、反応・毒性の再評価、減量・休薬・中止の計画を一続きにすることで、数字を臨床判断へ結びつけやすくなります。
承認用量、ガイドラインの記載、旧製剤の試験値、国外RCTの開始量は、同じmg/kg表記でも意味が異なります。数字を覚えるというより、数字の根拠とその後の再評価計画を一体で読むことが大切ではないでしょうか。
シクロスポリンは、薬を始める前から減量・休薬・中止の計画を考えることの大切さを、あらためて教えてくれる薬剤なのかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。
余白ノート
私は、疾患ごとにシクロスポリンの数字が違う理由を知りたいと思い、資料を読み始めました。けれども並べてみると、承認用量、ガイドラインの記載、旧製剤の試験値、RCTの開始量が混在していて、単純な比較では理解できないことに気づきました。
経験的な使い方が知られている薬剤でも、数字そのものだけでなく、その数字がどの製剤・対象・評価時期・試験設計から生まれたのかを読み直すことが大切なのではないでしょうか。これはシクロスポリンに限らず、治療を学び直すときの一つの姿勢になるように思います。
参考文献
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). ネオーラル10 mg/25 mg/50 mgカプセル、内用液10% 電子添文(2026年5月改訂、第4版). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300242_3999004M3021_2_33
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. 日皮会誌. 2024;134(11):2741-2843. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
- 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会. 蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版). 日皮会誌. 2026;136(4):375-493. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/fd75d78b6dc0a9199d380222719cd41b.pdf
- 日本皮膚科学会掌蹠膿疱症診療の手引き策定委員会. 掌蹠膿疱症診療の手引き2022. 日皮会誌. 2022;132(9):2055-2113. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PPP2022_220920.pdf
- 壊疽性膿皮症診療の手引き作成委員会. 壊疽性膿皮症診療の手引き2022. 日皮会誌. 2022;132(6):1415-1440. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/pyoderma_gangrenosum2022.pdf
- Zuberbier T, Abdul Hameed Ansari Z, Abdul Latiff AH, Abuzakouk MM, Agcaoili-De Jesus MS, Agondi RC, et al. The International Guideline for the Definition, Classification, Diagnosis and Management of Urticaria. Allergy. 2026. doi:10.1111/all.70210.
- Berth-Jones J, Exton LS, Ladoyanni E, Mohd Mustapa MF, Pardasani M, Takwale A, et al. British Association of Dermatologists guidelines for the safe and effective prescribing of oral ciclosporin in dermatology 2018. Br J Dermatol. 2019;180(6):1312-1338. doi:10.1111/bjd.17587.
- Ormerod AD, Thomas KS, Craig FE, Mitchell E, Greenlaw N, Norrie J, et al. Comparison of the two most commonly used treatments for pyoderma gangrenosum: results of the STOP GAP randomised controlled trial. BMJ. 2015;350:h2958. doi:10.1136/bmj.h2958.
