ステロイドの次に何を塗るか――AD非ステロイド外用薬4剤の使い分け
位置づけ――AD外用治療の軸は、まず炎症を十分に抑えることである。ステロイド外用薬は寛解導入の基軸であり、非ステロイド外用薬は部位・年齢・維持期・副作用懸念に応じて選ぶ抗炎症外用薬である。
適応――タクロリムスは2歳以上、デルゴシチニブは6カ月以上、ジファミラストは3カ月以上、タピナロフは12歳以上のADで使い分ける。年齢、濃度、塗布量、改善しない場合の中止目安を確認する。
安全性――皮膚感染症、びらん・粘膜・密封療法、妊娠・授乳、同一部位併用の経験不足を薬剤ごとに確認する。非ステロイドであっても「漫然と広く長く塗る薬」ではない。[1][2][3][4][5]
はじめに
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis: AD)の外来で、患者さんから「ステロイドではない薬に替えられますか」と尋ねられる場面は少なくありません。
一方で、非ステロイド外用薬と一口にいっても、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラスト、タピナロフでは、作用機序も、使える年齢も、注意点も異なります。
症例カンファレンスで「顔はタクロリムスへ」「乳幼児ならデルゴシチニブかジファミラストを検討」「12歳以上ならタピナロフも選択肢」といった発言を聞いたとき、最初はその判断軸が見えにくいかもしれません。
その答えは、「ステロイドか非ステロイドか」という二分法ではなく、どの病変に、どの強さと性質の抗炎症外用薬を、どの時期に使うかという整理にあります。
本稿では、ADに対するステロイドを含まない抗炎症外用薬の概要、薬剤ごとの適応、ステロイド外用薬との対比、安全に使うための確認点をまとめます。
非ステロイド外用薬をおさらいする
AD診療で「非ステロイド外用薬」と呼ばれるものには、少し注意が必要です。
非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)の外用薬は、ADに対する有用性が乏しく、副作用も考慮すると使用は推奨されないと整理されています[1]。したがって、ここで扱うのはNSAID外用薬ではなく、ステロイドを含まない抗炎症外用薬です。
AD診療ガイドライン2024では、炎症を十分に抑える外用薬として、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏が整理されています[1]。さらに、2024年6月にはタピナロフクリームがADと尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を効能・効果として承認されました[4][5]。
現在、AD外用治療で意識したい非ステロイド外用薬は、次の4系統です。
- タクロリムス:カルシニューリン(calcineurin)を阻害し、T細胞機能を抑える
- デルゴシチニブ:ヤヌスキナーゼ(Janus kinase: JAK)ファミリーを阻害し、サイトカインシグナルを抑える
- ジファミラスト:ホスホジエステラーゼ4(phosphodiesterase 4: PDE4)を阻害し、細胞内cyclic adenosine monophosphate(cAMP)を介して炎症性サイトカイン・ケモカイン産生を制御する
- タピナロフ:芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor: AhR)を活性化し、炎症、酸化ストレス、皮膚バリア機能に関わる遺伝子発現を調節する
この4剤は、いずれも「ステロイドではない」点では共通します。しかし臨床的には、年齢、病変部位、炎症の強さ、維持期か急性期か、併用薬の有無で選び分ける薬剤です。
ステロイド外用薬との対比
ステロイド外用薬は、AD外用治療の基本です。皮疹の重症度に応じてランクを選び、必要十分な量を必要な期間使うことで、速やかな寛解導入を目指します[1]。
非ステロイド外用薬は、この基軸を置き換える薬というよりも、ステロイド外用薬で炎症を抑えた後の維持、顔面・頸部など局所副作用を意識する部位、年齢や患者さんの希望に応じた選択肢として理解すると整理しやすくなります。
| 比較項目 | ステロイド外用薬 | 非ステロイド外用薬 |
|---|---|---|
| 治療上の役割 | 寛解導入の基軸。皮疹の重症度に応じてランクを選択 | 部位・年齢・維持期に応じた選択肢。薬剤ごとに適応が異なる |
| 強さの考え方 | ランクで調整する | ランクではなく、作用機序・年齢・塗布量・部位で調整する |
| 重症・急性炎症 | ベリーストロング以上を含めて十分に抑える場面あり | 強い炎症では、先にステロイドで改善後に移行を検討 |
| 顔面・頸部・眼周囲 | 吸収率と局所副作用に注意。漫然と強いランクを使わない | タクロリムスなどが維持や代替として有用な場面あり |
| 主な注意 | 皮膚萎縮、毛細血管拡張、ざ瘡様皮疹、眼周囲使用時の眼圧など | 刺激感、毛包炎・ざ瘡、接触皮膚炎、皮膚感染症、経皮吸収増加条件 |
表の根拠:[1][2][3][4][5]
この表を縦に見ると、ステロイド外用薬は「炎症の強さ」に対してランクで応答する薬剤であることがわかります。
一方で横に見ると、非ステロイド外用薬は「ステロイドではないから弱い薬」ではなく、別の制約をもつ抗炎症外用薬であることが見えてきます。ここを押さえると、非ステロイド外用薬を「安心材料」としてではなく、治療設計の道具として扱いやすくなります。
薬剤ごとの適応を一望する
まず、実践的に確認しやすいように、4剤の適応と注意点を表にまとめます。
| 薬剤 | 作用機序 | 適応・年齢 | 用法・量の目安 | 向きやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| タクロリムス軟膏 | カルシニューリン阻害 | 2歳以上。2〜15歳は0.03%、16歳以上は0.1% | 0.1gで10cm四方が目安。成人0.1%は1回5gまで。小児は年齢・体重で上限設定 | 顔面・頸部、ステロイド局所副作用が気になる部位、寛解後の維持 | 2歳未満は使用しない。粘膜、外陰部、びらん・潰瘍面、密封法・重層法は避ける。刺激感、皮膚感染症に注意。妊婦・授乳婦では有益性を踏まえて個別に検討 |
| デルゴシチニブ軟膏 | JAK阻害 | 6カ月以上。0.25%、0.5%を症状・年齢に応じて使用 | 1日2回。成人は1回5gまで。小児も1回5gまでを上限に体格を考慮し、塗布は体表面積30%までを目安 | 広い年齢層での炎症制御。ステロイド以外の抗炎症外用薬を必要とする場面 | びらん面、粘膜、密封療法、亜鉛華軟膏リント布貼付は避ける。妊婦では有益性が危険性を上回る場合に限る。授乳は継続・中止を検討 |
| ジファミラスト軟膏 | PDE4阻害 | 3カ月以上。成人は1%、小児は0.3%が通常 | 1日2回。皮疹面積0.1m2あたり1gが目安。小児で1%使用後に改善した場合は0.3%へ変更を検討 | 小児を含む幅広い年齢での選択肢。ステロイド・タクロリムスとの部位別併用を考える場面 | 1%で4週間以内に改善がなければ中止を検討。びらん面、粘膜、密封療法は避ける。妊娠可能な女性への避妊指導、妊婦では使用しないことが望ましい。授乳は継続・中止を検討 |
| タピナロフクリーム | AhR調節 | 12歳以上のAD。1%製剤 | 1日1回。8週間以内に改善がなければ中止を検討 | 12歳以上で、1日1回外用や新しい作用機序を考慮する場面 | 12歳未満では臨床試験なし。毛包炎、ざ瘡、接触皮膚炎、頭痛に注意。妊婦では有益性が危険性を上回る場合に限る。授乳は継続・中止を検討 |
表の根拠:[1][2][3][4][5]
この表の実用上のポイントは、薬剤名より先に年齢と病変の状態を見ることです。
乳幼児であればタクロリムスは適応外となる年齢があり、デルゴシチニブやジファミラストのほうが候補に上がります。12歳以上であればタピナロフも選択肢に入ります。一方、びらんや感染を伴う部位では、どの薬剤でも「塗ってよいか」を一度立ち止まって確認する必要があります。
4剤をどう使い分けるか
実際の選択は、皮疹の重症度、部位、年齢、併用治療、患者さんの希望によって変わります。以下は、薬剤の性質からみた整理です。
タクロリムス
タクロリムスは、ステロイド外用薬とは異なる機序でT細胞機能を抑える薬剤です。ガイドラインでは、AD患者さんの症状改善を目的として推奨度1、エビデンスレベルAですすめられています[1]。
臨床的に重要なのは、顔面・頸部に適した選択肢になりやすいことです。ステロイド外用薬で炎症を速やかに抑えた後、眼周囲や顔面の維持に移行する場面では、とくに理解しておきたい薬剤です。
ただし、タクロリムスは「どこにでも塗れる薬」ではありません。粘膜、外陰部、びらん・潰瘍面では使用せず、密封法や重層法も避けます[1]。塗布初期の灼熱感やほてり感は、患者さんが不安になりやすい副作用です。あらかじめ説明しておくことが、継続のしやすさにつながります。
また、皮膚萎縮は確認されていない一方、細菌・ウイルスによる皮膚感染症には注意が必要です[1]。タクロリムスは「ステロイドの不安に応える薬」というよりも、顔面・頸部や維持期で活きる、制約のある抗炎症薬と捉えるのがよいでしょう。
妊婦・授乳婦では禁忌ではありませんが、妊婦では治療上の有益性が危険性を上回る場合に検討し、授乳では継続または中止を個別に考えます[1]。
デルゴシチニブ
デルゴシチニブは、JAK1、JAK2、JAK3、tyrosine kinase 2(TYK2)を含むJAKファミリーを阻害し、サイトカインシグナルを抑える外用薬です[1][2]。
この薬剤の臨床上の特徴は、6カ月以上の小児にも使用可能になった点です。乳幼児を含むAD診療では、選択肢が限られるため、この適応年齢の広さは実践上大きな意味を持ちます[1]。
一方で、デルゴシチニブは塗布量と塗布条件を外さないことが重要です。成人では1日2回、1回5gまで、小児では1回5gまでを上限に体格を考慮し、体表面積30%までを目安にします[1]。びらん面、粘膜、密封療法、亜鉛華軟膏を伸ばしたリント布貼付は、経皮吸収を増やしうるため避けます[1][2]。
局所副作用としては、毛包炎、ざ瘡、カポジ水痘様発疹症(Kaposi varicelliform eruption)、単純疱疹(herpes simplex)、接触皮膚炎(contact dermatitis)などが挙げられています[1][2]。外用後に「ADが悪化した」ように見える場合でも、感染症や接触皮膚炎を含めて見直す必要があります。
妊婦または妊娠している可能性のある女性では、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用します。授乳婦では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を踏まえて、授乳の継続または中止を検討します[2]。
デルゴシチニブは、局所JAK阻害薬として有用性と同時に曝露管理を意識する薬剤です。「非ステロイドだから多めでもよい」ではなく、むしろ用法・用量を守ることが安全性の前提になります。
ジファミラスト
ジファミラストはPDE4阻害薬です。PDE4を阻害することで細胞内cAMP濃度を高め、炎症細胞や上皮細胞からのサイトカイン・ケモカイン産生を制御します[1][3]。
適応年齢は3カ月以上です。通常、成人には1%製剤を1日2回、小児には0.3%製剤を1日2回使用し、症状に応じて小児にも1%製剤を使うことがあります。小児で1%製剤を使用して改善した場合は、0.3%製剤への変更を検討します[1][3]。
実践上の目安として、塗布量は皮疹面積0.1m2あたり1gです[1][3]。このような面積ベースの目安があるため、広範囲に使う場面では、患者さんやご家族に塗布量を具体的に伝えることが大切です。
ジファミラストは、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏との部位別併用が可能と判断されていますが、同一部位への塗布については安全性データがなく、必要性を慎重に考える必要があります[1][3]。
また、妊娠可能な女性には投与中および終了後一定期間の避妊を指導し、妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用しないことが望ましいとされています[1][3]。小児にも使いやすい印象だけで処方するのではなく、年齢には広く、妊娠可能性には慎重にという対比で覚えておくと実践的です。
タピナロフ
タピナロフは、治療用AhR調節薬(therapeutic AhR modulating agent: TAMA)として位置づけられる外用薬です。AhRを活性化し、炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導し、皮膚バリア機能を改善する作用が示されています[4][5]。
ADでは、成人および12歳以上の小児に1日1回使用します。12歳未満では、有効性・安全性を指標とした臨床試験は実施されていません[4][5]。
1日1回でよい点は、アドヒアランスの面で利点になります。ただし、ADでは8週間以内に症状改善が認められない場合は使用中止を検討し、改善後も漫然と長期使用しないことが求められます[5]。
副作用では、適用部位毛包炎、適用部位ざ瘡、接触皮膚炎、頭痛などが目立ちます[4][5]。特に毛包炎やざ瘡様の変化は、ADの丘疹や掻破痕と紛らわしいことがあります。塗布後に毛包一致性の皮疹が増えた場合には、薬剤関連の変化として見直す視点が必要です。
妊婦または妊娠している可能性のある女性では、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用します。授乳婦では、母乳栄養の有益性も含めて継続または中止を検討します[4][5]。
併用については、ステロイド外用薬、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラスト、生物学的製剤、全身療法薬、光線療法のいずれも経験が少ない、またはないとされています[4]。タピナロフは新しい選択肢ですが、新しいから上乗せしやすい薬ではなく、併用経験の少なさを前提に設計する薬と考えるのが穏当です。
処方前に確認したいポイント
ここまでの内容を踏まえると、非ステロイド外用薬を選ぶ前に確認したいポイントは、次の4つに整理できます。
- 炎症の強さ:重症・急性炎症では、まず適切なランクのステロイド外用薬で寛解導入を検討する
- 年齢と濃度:タクロリムス2歳以上、デルゴシチニブ6カ月以上、ジファミラスト3カ月以上、タピナロフ12歳以上を確認し、年齢に応じた濃度を選ぶ
- 塗布部位:顔面・頸部・眼周囲、体幹四肢、外陰部、粘膜、びらん面を分け、薬剤ごとの使用制限を確認する
- 妊婦・授乳婦:タクロリムス、デルゴシチニブ、タピナロフは有益性を踏まえて個別に検討し、ジファミラストでは避妊指導、妊娠可能性、授乳継続・中止の検討を確認する
この4項目は、単なるチェックリストではありません。「非ステロイドなら一律に安全」という誤解を避け、薬剤の個性に合わせて処方するための前評価として機能します。
おわりに
ADの外用治療では、ステロイド外用薬を適切に使って炎症を抑えることが出発点です。
そのうえで、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラスト、タピナロフは、それぞれ異なる機序と適応を持つ選択肢として、治療の幅を広げてくれます。
大切なのは、「ステロイドか、非ステロイドか」という対立で考えないことです。強い炎症をどのように抑え、どの部位をどの薬で維持し、どの副作用をどのように避けるか。その設計のなかで、非ステロイド外用薬の価値が見えてきます。
外用薬の使い分けは、薬剤名を覚える作業というより、皮膚の状態を読み、患者さんの生活に合わせて治療を配置する作業なのかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。
余白ノート
非ステロイド外用薬について整理していると、「ステロイドではない」という言葉だけでは、ほとんど何も説明していないことに気づきます。タクロリムス、JAK阻害薬、PDE4阻害薬、AhR調節薬は、それぞれまったく別の入口から炎症に触れています。
外用薬の説明では、つい「強い薬」「弱い薬」という言い方をしたくなります。しかし実際には、強弱だけではなく、部位、年齢、塗布量、併用経験、患者さんの不安が重なって処方が決まります。薬剤の分類を覚えることは、暗記というより、診察室での対話を少し丁寧にするための準備なのではないでしょうか。
参考文献
- 公益社団法人日本皮膚科学会,一般社団法人日本アレルギー学会,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会;佐伯秀久,大矢幸弘,荒川浩一,市山進,勝沼俊雄,加藤則人,ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.日皮会誌 2024; 134(11): 2741-2843.
- 中村晃一郎,二村昌樹,常深祐一郎,種瀬啓士,加藤則人:デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®軟膏0.5%)安全使用マニュアル.日皮会誌 2020; 130(7): 1581-1588.
- 常深祐一郎,井川健,石氏陽三,種瀬啓士,二村昌樹,加藤則人:ジファミラスト軟膏(モイゼルト®軟膏0.3%,1%)安全使用マニュアル.日皮会誌 2022; 132(7): 1627-1635.
- 塩野義製薬株式会社:ブイタマー®クリーム1% 適正使用について.2026年1月作成.
- ブイタマークリーム1% 添付文書情報(2025年12月改訂 第5版).
