蜂窩織炎では何を検査するか――臨床場面から組み立てる初診時の検査
緊急性――敗血症または壊死性軟部組織感染症を疑う場合は、採血結果を待たず、検査・治療・救急/外科への相談を並行する。
検査選択――全身状態、治療場所、臓器機能、膿瘍や創傷の有無を確認し、診療方針の決定に必要な検査だけを選ぶ。
[1][2][4][7]
はじめに
蜂窩織炎を疑う患者さんを診察するとき、採血をどこまで行うか迷うことはないでしょうか。血算、C反応性蛋白(C-reactive protein: CRP)、一般生化学はよく選ばれますが、すべての患者さんに同じ検査が必要とは限りません。血液培養や画像検査も、病状や診察所見によって必要性が変わります。
蜂窩織炎(cellulitis)は、検査値だけで確定する疾患ではありません。大切なのは、検査項目を増やすことではなく、どの臨床場面で検査を行い、その結果をどの判断に使うかを決めることです。
本稿では、主として成人の四肢に生じた、明らかな膿瘍を伴わない一般的な蜂窩織炎を扱います。眼窩・歯性・会陰部感染、糖尿病足感染、開放創感染そのもの、小児は個別の診療手順が必要であり、本稿の対象外です。ただし、侵入門戸や採取可能な検体として創・潰瘍を確認することは、通常の診察に含めます。
まず緊急性を判断する
まず、敗血症または壊死性軟部組織感染症を疑うかを判断します。その後の考え方を、次の分岐図にまとめます。

敗血症(sepsis)や壊死性軟部組織感染症(necrotizing soft tissue infection: NSTI)を疑うレッドフラッグには、循環・呼吸異常、意識変容、急速な病変拡大、皮膚所見に比して強い疼痛、水疱、紫斑、壊死、握雪感などがあります。この場合は、採血結果を待ってから対応するのではなく、必要な検査、蘇生、抗菌薬、救急・外科評価を並行します。[1][2][4]
壊死性筋膜炎の検査リスク指標(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis: LRINEC)は、血液検査からNSTIの可能性を考える補助指標です。しかし、前向き検証では除外に十分な感度を示していません。低いLRINECのみを根拠にNSTIを除外しないことが重要です。[7]
重要な免疫不全、動物による咬傷、水に浸かった創傷は、それ自体が敗血症やNSTIを意味するわけではありません。一方で、血液培養や病変部からの培養を検討する理由になるため、緊急性とは別に確認します。[1][4]
臨床場面ごとに検査を選ぶ
初診時の検査は、次のように臨床場面から選ぶと整理しやすくなります。同時に複数の場面に当てはまる場合は、それぞれに必要な対応を組み合わせます。
| 臨床場面 | まず確認すること | 行う検査 | 検査と並行して行うこと |
|---|---|---|---|
| 敗血症を疑う | 循環・呼吸異常、意識変容、臓器障害を疑う所見 | 血算・CRP・一般生化学、血液培養2セット、乳酸。状態に応じて凝固系・血液ガス | 蘇生、抗菌薬、救急対応。培養採取のために治療を遅らせない |
| NSTIを疑う | 強い疼痛、急速な拡大、水疱・紫斑・壊死、握雪感 | 自施設のNSTI手順に沿う採血。外科評価・治療を遅らせない範囲で、必要に応じてCT・MRI | 広域抗菌薬を開始し、外科・専門科へ緊急相談して感染源コントロールを進める。不安定な場合は蘇生を並行する |
| 全身状態がよく、典型的な蜂窩織炎である | 重要な免疫不全、膿瘍・深部病変を疑う所見、排膿、感染徴候を伴う開放創、咬傷、水に浸かった創傷がなく、再診可能か | 検査結果が診療方針に影響しない場合は、ルーチン採血・培養・画像検査を省略できるか検討 | 病変範囲、侵入門戸、悪化時に受診する目安を記録・説明する |
| 全身症がある、または入院・点滴を検討する | 脱水、臓器障害、重要な併存症、診断や重症度の不確実さ | 血算・白血球分画・血小板、CRP、一般生化学 | 診療場所、補液、薬剤投与設計、受診・紹介方針を調整する |
| 菌血症や通常と異なる病原体を考える | 重要な免疫不全、好中球減少、動物による咬傷、水に浸かった創傷、悪寒戦慄など | 血液培養。排膿や感染徴候を伴う開放創があり、原因菌を捉えやすい検体が得られる場合は病変部の培養 | 病原体に応じて感染源と治療内容を見直す |
| 膿瘍を考える | 波動、排膿、限局した圧痛・腫脹 | 診察で膿瘍が明らかでなければ超音波検査(エコー)。培養結果を診療に利用できる場合は膿培養を検討 | 排膿などの感染源コントロール |
| 深部への進展や骨病変を考える | 強い疼痛、深部の圧痛、急速な進展 | 確認したい深部病変に応じてCT・MRI | 外科・専門科へ相談する。NSTIを疑う場合は上記の緊急対応を優先する |
根拠の対応:敗血症[2][4][5]、NSTI[1][4][7]、軽症時の検査省略[1][6]+編集統合、培養・検体[1][3][4][5]、画像[1]。
表を縦に見ると、同じ「蜂窩織炎」でも必要な検査は病状によって異なります。しかし横に見ると、診察所見を出発点として、検査後に変わりうる診療判断へつなげるという考え方は共通しています。
血算・CRP・一般生化学
血算・白血球分画・血小板、CRP、一般生化学は、蜂窩織炎を確定するためというより、全身炎症、臓器機能、脱水、併存症、治療前の安全性を確認するために行います。一般生化学には、電解質、腎機能、肝胆道系、血糖などを含めます。
例えば、腎機能・電解質は補液や薬剤投与設計、血小板や肝胆道系は重症感染時の臓器障害評価、血糖は急性期高血糖への対応を考える材料になります。[2]
一方、全身状態がよく、結果を確認しても治療場所、投与経路、補液、紹介方針が変わらない場合は、「念のため」という理由だけで自動的に追加しない選択も考えられます。2014年の海外ガイドラインでは、非複雑性の下肢蜂窩織炎・丹毒(erysipelas)で一般採血をルーチンに追加する診断的価値は乏しいとされていますが、根拠の質には限界があります。[6] 国内ガイドラインが直接支持している軽症時の省略は主に培養と画像検査であり、一般採血の省略は逐語的な推奨ではありません。[1]
血算やCRPは、単独で蜂窩織炎を確定・除外する検査ではありません。[6] 深部感染が疑われる場合は、検査値だけでなく臨床所見を優先します。[4][7]
血液培養と病変部の培養
典型的な軽症蜂窩織炎では、血液培養や皮膚の穿刺・生検・表面スワブ培養をルーチンに行うことは推奨されていません。悪性腫瘍化学療法中、好中球減少、重い細胞性免疫不全、動物による咬傷、水に浸かった創傷などでは、血液培養や病変部からの培養を検討します。[1][4]
敗血症が疑われる場合は、可能であれば抗菌薬投与前に血液培養2セットを採取します。ただし、培養採取のために必要な治療を遅らせないようにします。[2][5]
国内の単施設研究では、高齢群を含む入院集団で、悪寒戦慄、白血球増多、重症所見などと菌血症の関連が報告されています。ただし、感染症科入院患者を対象とし、丹毒・膿瘍なども含む集団です。年齢または入院だけを血液培養の適応とせず、悪寒戦慄、全身状態、免疫状態、咬傷や水への曝露を合わせて判断します。白血球数(white blood cell count: WBC)は、すでに判明している場合の補助所見であり、その結果を待って血液培養や敗血症対応を決めるものではありません。[3]
再発、重症、治療反応不良、免疫不全、通常と異なる病原体を疑う場合など、培養結果が診療方針に影響すると考えられるときは、膿や深部組織など、病変の原因菌を捉えやすい検体を採取します。創のない紅斑部から表面スワブを機械的に提出しても、原因菌の特定にはつながりにくいためです。[1][4][5]
超音波検査・CT・MRI
診察だけでは膿瘍の有無や範囲が明らかでない場合は、超音波検査(エコー)を検討します。排膿が明らかな場合は、画像検査を一律に追加するより、感染源コントロールを優先し、培養結果を診療に利用できる場合に膿培養を検討します。[1][4]
コンピュータ断層撮影(computed tomography: CT)や磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)は、膿瘍の広がり、筋・筋膜病変、骨髄炎(osteomyelitis)など、確認したい深部病変に応じて選びます。[1]
NSTIを強く疑う場合は、画像検査の結果を待つことで外科・専門科への相談を遅らせないことが重要です。[4][7]
おわりに
蜂窩織炎の検査は、全例に同じ項目を並べるより、臨床場面から選ぶ方が整理しやすくなります。まず敗血症・NSTIの可能性を確認し、緊急性がなければ、全身症、治療場所、臓器機能、膿瘍や創傷の有無から必要な検査を選びます。
血算・CRP・一般生化学は診断を確定する検査というより、全身状態と治療の安全性を確認する検査です。培養と画像検査は、菌血症、病原体、膿瘍、深部病変を疑う理由があるときに追加します。
検査項目を覚えるだけでなく、「この患者さんでは、なぜこの検査が必要なのか」を一度言葉にしてみることが、過不足の少ない検査選択につながるのではないでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。
余白ノート
蜂窩織炎の検査を整理するとき、以前の私は「セットに何を足すか」から考えがちでした。しかし調べてみると、軽症例、菌血症を疑う例、膿瘍を伴う例、深部感染を疑う例では、検査の目的がそれぞれ異なります。
検査項目の一覧を作るというより、診察で確認した所見を次の判断につなげる。そのように考え直すと、日頃の採血や画像検査の意味も少し見えやすくなるのかもしれません。
参考文献
- 日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会 編. 形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患「感染創診療ガイドライン」. 第2版. 金原出版; 2021. 公式PDF
- 志馬伸朗, 中田孝明, 矢田部智昭, ほか. 日本版敗血症診療ガイドライン2024. 日本集中治療医学会雑誌. 2024;31(Suppl 2):S1165-S1313. doi:10.3918/jsicm.2400001
- Taniguchi T, Tsuha S, Shiiki S, Narita M, Teruya M, Hachiman T, Kogachi N. High Yield of Blood Cultures in the Etiologic Diagnosis of Cellulitis, Erysipelas, and Cutaneous Abscess in Elderly Patients. Open Forum Infect Dis. 2022;9(7):ofac317. doi:10.1093/ofid/ofac317
- Stevens DL, Bisno AL, Chambers HF, Dellinger EP, Goldstein EJC, Gorbach SL, et al. Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2014;59(2):e10-e52. doi:10.1093/cid/ciu296
- Miller JM, Binnicker MJ, Campbell S, Carroll KC, Chapin KC, Gonzalez MD, et al. Guide to Utilization of the Microbiology Laboratory for Diagnosis of Infectious Diseases: 2024 Update by the Infectious Diseases Society of America and the American Society for Microbiology. Clin Infect Dis. 2024;ciae104. doi:10.1093/cid/ciae104
- Nederlandse Vereniging voor Dermatologie en Venereologie. Cellulitis-erysipelas onderste extremiteiten: Laboratoriumonderzoek. 2014. Guideline module
- Hsiao CT, Chang CP, Huang TY, Chen YC, Fann WC. Prospective Validation of the Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis (LRINEC) Score for Necrotizing Fasciitis of the Extremities. PLoS One. 2020;15(1):e0227748. doi:10.1371/journal.pone.0227748
