皮膚筋炎の外来スイッチ— 典型疹・痛い皮疹・手指所見 —
皮膚筋炎は間質性肺炎や悪性腫瘍が予後を左右する
皮膚筋炎は、特徴的な皮疹と筋炎で知られる一方で、間質性肺炎や悪性腫瘍を合併しうる疾患です。間質性肺炎(特に急速進行性)や悪性腫瘍は予後を大きく左右します。
加えて皮膚筋炎は、いつも教科書通りの臨床像を呈するとは限りません。筋症状が目立たない/ない病型(clinically amyopathic
dermatomyositis; CADM)もあり、CADMでも間質性肺炎などの全身合併症を持ちうる点に注意が必要です。
また、皮膚筋炎は陽性となる抗体によってある程度臨床型の傾向があることが知られています。今回はある文献[1]にわかりやすく抗体と病型とをまとめた表が記載されているのを見つけましたので、そちらも共有します。
今回の記事のポイント
- 典型疹のヘリオトロープ疹・ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候を見落とさない
- 典型疹が弱いときほど、痛い皮疹(逆ゴットロン丘疹・皮膚潰瘍・脂肪織炎)と手(機械工の手・レイノー現象)をみる
- 抗体は「診断のため」だけでなく、肺と癌に目をやるためのきっかけになる
1) 典型的な臨床所見
典型的皮膚所見
外来で「皮膚筋炎っぽさ」に気づくために、典型的所見を知っておく必要があります。
- ヘリオトロープ疹:両側眼瞼の紫紅色調、ときに浮腫を伴う
- ゴットロン丘疹:手指背側関節上の扁平隆起性丘疹
- ゴットロン徴候:肘・膝などの角化性紅斑
- 爪周囲病変:爪周囲紅斑、ダーモスコピーにて毛細血管拡張、点状出血
- ショールサイン/Vネックサイン:頸部、胸部、背部のびまん性浮腫性紅斑
後ほど表を引用するこの文献[1]では、ヘリオトロープ疹・ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候を典型的な皮疹としています。
典型的な皮膚以外の所見
- 対称性の近位筋力低下
- 筋酵素上昇(CK、アルドラーゼ)
- 針筋電図・筋MRI・筋生検の異常
筋症状を伴わないCADM(clinically amyopathic DM)に注意
CADMという、「皮疹は存在するが、臨床的な筋症状がない」皮膚筋炎のサブタイプが知られています。
- CADMでも間質性肺炎などの全身病変を持ちうる
- 原則として皮膚症状が6か月続き、筋病変が臨床的に明らかでないときにCADMとする
筋症状がないからと皮膚筋炎を除外はできない点に注意が必要です。
2) 抗体ごとの臨床像
以下の表は、先ほどから紹介している皮膚筋炎についての総説[1]に記載されている表を引用し和訳したものです。抗体ごとに病型をまとめたもので、「典型的皮膚所見」「間質性肺炎」「悪性腫瘍」を確認できます。
表1 皮膚筋炎における抗体ごとの臨床的特徴([1] の Table 1 Clinical features associated with antibodies implicated in DM を引用、和訳)
| 抗体 | 典型的皮膚所見 | 光線過敏性皮膚病変 | 低筋症性(hypomyopathic) | 間質性肺炎 | 皮膚石灰化 | 重度筋障害 | 悪性腫瘍関連 | その他の特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 抗Mi-2 | あり | なし | なし | なし | まれ | なし | なし | 顔面皮疹、ショール徴候、爪周囲紅斑、CK高値、治療反応性良好 |
| 抗TIF1-γ | あり | あり | あり | なし | なし | なし | 強い関連 | 手掌角化、乾癬様局面、(red on white poikiloderma/口蓋病変など) |
| 抗MDA5 | なし(典型疹が薄いことがある) | なし | あり | あり(急速進行性) | なし | なし | なし | 皮膚潰瘍、疼痛性手掌丘疹(逆ゴットロン丘疹)、脂肪織炎、関節炎、発熱 |
| 抗NXP2 | あり | なし | なし | なし | しばしば(小児) | あり | 増加(成人) | 末梢浮腫、重度筋炎、消化管出血、血管障害 |
| 抗SAE1/2 | あり | あり | あり(初期) | 可能性あり(軽度) | なし | あり(進行性) | 不明 | 重度皮膚病変、嚥下障害、発熱、体重減少 |
| 抗Jo-1(ASyS)(※PL-7/PL-12/EJ/OJも含む) | なし | なし | なし | あり | なし | あり | なし | “機械工の手”、非びらん性関節炎、発熱、レイノー現象、DMとのオーバーラップ |
この表を参考に、皮膚科外来での注意すべき症状を確認していきます。
3) 注意すべき皮膚所見
上記の表から、皮膚科外来で注意すべき所見を見ていきます。
ここでは皮膚筋炎であるとまだ診断されていない状況を想定していますので、抗体はまだわからない前提です。
重症合併症を見逃さないための皮膚症状を確認します。
A. 悪性腫瘍を見逃さないための皮膚所見:抗TIF1-γ/抗NXP2
抗TIF1-γと抗NXP2は悪性腫瘍リスク増加と関連します。
皮膚筋炎に合併する悪性腫瘍の特徴として、男性では肺癌が多く、女性では乳癌・婦人科癌が多い、消化管癌は両性で多い、と整理されています。[1]
抗TIF1-γと抗NXP2はいずれも典型的皮膚所見が認められる傾向があります。
つまり、悪性腫瘍の合併を見逃さないためには、典型的皮膚所見を見逃さないことが重要です。
B. 間質性肺炎を見逃さない皮膚所見:抗MDA5/抗ARS(ASyS)
間質性肺炎は皮膚筋炎における重要合併症で、抗MDA5や抗ARSと関連し、予後を左右し得ます。
抗MDA5
抗MDA5はCADMと結びつきやすく、間質性肺炎のリスクが指摘されています。
典型的皮膚所見は乏しく、代わりに以下の皮膚所見を認めることがあります。
- 皮膚潰瘍(ulcerative lesions)
- 疼痛性の手掌丘疹=逆ゴットロン丘疹
- 脂肪織炎(panniculitis)
全体として「痛い皮疹」の印象です。
抗ARS
抗ARSでは間質性肺炎が最重要の臨床像で、抗Jo-1/PL-7/PL-12などでしばしば急速進行、生命に関わりうるとされます。
皮膚症状としては、以下の所見に注意が必要です。
- レイノー現象
- “機械工の手”
ともに手指で気づける所見です。
注意すべき皮膚所見と合併症
注意すべき皮膚所見と合併症をまとめます。
- 典型疹のヘリオトロープ疹・ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候は悪性腫瘍スクリーニング
- 典型疹が弱いときは、痛い皮疹(逆ゴットロン丘疹・皮膚潰瘍・脂肪織炎)や、手(機械工の手・レイノー現象)をみて間質性肺炎を鑑別する
まとめ
それではポイントを確認していきましょう。
- 典型疹のヘリオトロープ疹・ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候を見落とさない
- 典型疹が弱いときほど、痛い皮疹(逆ゴットロン丘疹・皮膚潰瘍・脂肪織炎)と手(機械工の手・レイノー現象)をみる
- 抗体は「診断のため」だけでなく、肺と癌に目をやるためのきっかけになる
悪性腫瘍を合併しやすい皮膚筋炎の病型では、典型的皮膚所見を見逃さないことが重要です。そして、間質性肺炎を合併しやすい病型では典型的皮膚所見を欠くことが多く、その場合には逆ゴットロン丘疹・皮膚潰瘍・脂肪織炎・機械工の手・レイノー現象が診断のヒントになります。
ただし、どの病型も例外はありえるので、抗体ごとの病型は意識しつつ、最終的には臨床症状を総合的に判断することになります。
病型分類をヒントにしつつ、皮膚筋炎を見逃さないよう励みたいです。
ここまでご拝読ありがとうございます。この記事が皆様の今後に役立てれば幸いです。それでは。
余白ノート
今回の記事のきっかけは、記事内でも紹介している総説[1]の表でした。
今までは、皮膚筋炎は悪性腫瘍や間質性肺炎を合併しうるから注意が必要、とは思っていましたが、この総説の表では、
典型的皮膚所見では悪性疾患を疑うべき、間質性肺炎を拾うには典型的皮膚所見だけを見ていては拾えない
ということが伝わってきます。
典型的皮膚所見以外の注意すべき皮膚所見の中身を見ると、逆ゴットロン丘疹・皮膚潰瘍・脂肪織炎・機械工の手・レイノー現象と、皮膚筋炎の所見として紹介されるようなものもあります。しかし、ヘリオトロープ疹やゴットロン丘疹なしで、これらの所見だけから皮膚筋炎も疑うべきというのは意識していなければハードルが高いように思います。
全てを重症疾患に繋げるのも考えものですが、ささいな所見が重症疾患のヒントになりうると認識していることは臨床現場ではプラスに働くのではないでしょうか。
参考文献
[1] Ali H, On A, Xing E, Shen C, Werth VP. Dermatomyositis: focus on cutaneous features, etiopathogenetic mechanisms and their implications for treatment. Semin Immunopathol. 2025 Aug 6;47(1):32. doi: 10.1007/s00281-025-01054-9. PMID: 40770118; PMCID: PMC12328487.
