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円形脱毛症の併用療法―今の治療に何が足せる?併用可否表(ガイドライン2024)―

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多岐にわたる円形脱毛症治療

円形脱毛症の治療法は非常に多岐にわたります。日本皮膚科学会の診療ガイドライン2024では、それぞれの治療法について推奨度や適応が詳細に記載されており、日々の臨床において大変参考になります。

ガイドラインには、特定の治療法について併用に関する記載もあります。たとえば局所免疫療法の項目では「原則としてステロイド外用との併用は行わない」と明記されています。また、紫外線療法の項目では、「症状固定期の全頭型や汎発型については併用療法として行ってよい」との記載があります。

しかしながら、これらの併用に関する情報はそれぞれの治療法の欄に個別に記載されているため、一覧性に乏しいと感じていました。どの治療法とどの治療法を併用できるのか、あるいは避けるべきなのかを把握するには、ガイドライン全体を丁寧に読み込む必要があります。

そこで今回、併用可否について一覧性の高い表を作成しましたので、ここに共有します。なお、本記事は成人患者を前提としており、内容の多くは日本皮膚科学会の診療ガイドライン2024を参考に再構成したものです。

円形脱毛症の主な治療法

本記事で取り上げる主な治療法は以下の9つです。ガイドラインに記載されたすべての治療法を網羅しているわけではありませんのでご注意ください。

  • ステロイド外用薬:脱毛部位に直接塗布し、局所の炎症を抑制する基本的な治療法です。単発型から融合傾向のない多発型に対してステロイドを1日1〜2回外用します。
  • ステロイド局所注射:脱毛部位の真皮下層にステロイド剤を直接注入する治療法です。単発型および多発型の成人症例に対して強く推奨されており、4〜6週間隔で施行することが一般的です。
  • ステロイドパルス療法:メチルプレドニゾロンを3日間連続で点滴静注する治療法です。発症初期で急速に進行しているS2以上の成人症例に適応があります。
  • 局所免疫療法:SADBEなどの感作物質を用いて意図的に接触皮膚炎を起こし、免疫応答を調整して発毛を促す治療法です。年齢を問わずS2以上の多発型、全頭型、汎発型の症状固定期に適応があります。
  • JAK阻害薬内服:バリシチニブやリトレシチニブなど、近年承認された経口薬です。頭部全体の概ね50%以上に脱毛があり、過去6カ月程度自然再生が認められない難治性の成人症例に適応があります。
  • 光線療法:紫外線照射により局所の免疫反応を調整する治療法です。PUVA療法は全頭型や汎発型に、エキシマライトやnarrow-band UVB療法は主に通常型(単発型・多発型)の成人例に対して行われます。
  • セファランチン内服:アルカロイド製剤で、単発型および多発型の症例に対してカルプロニウム外用やステロイド外用との併用療法として用いられます。保険適用があり、長期の安全性が担保されています。
  • 抗ヒスタミン薬内服:主にアトピー素因を有する症例において、アトピー素因の改善効果を期待して併用される治療法です。特に局所免疫療法との併用で重症例における治療効果向上の報告があります。
  • カルプロニウム塩化物外用:血管拡張作用により毛根への血流を改善する外用薬です。円形脱毛症に保険適用があり、主に単発型および多発型の軽症例に対して併用療法の一つとして用いられます。

併用可否表

以下に、各治療法の併用可否をまとめた表を示します。

治療法\併用相手1.ステロイド外用2.ステロイド局注3.ステロイドパルス4.局所免疫療法5.JAK阻害薬6.光線療法7.セファランチン8.抗ヒスタミン9.カルプロニウム
1.ステロイド外用×
2.ステロイド局注×
3.ステロイドパルス××
4.局所免疫療法××××
5.JAK阻害薬内服××
6.光線療法××
7.セファランチン内服
8.抗ヒスタミン内服
9.カルプロニウム外用


凡例
• ◯:併用により治療効果向上の報告あり
• △:臨床上併用可能と考えられるが、治療効果を高める根拠が乏しい
• ×:治療効果を妨げうる、または安全性の懸念がある


本表は主に円形脱毛症診療ガイドライン2024を参照して作成しました。表の各交点は、同時期・同部位・同目的での使用を想定しています。対象は成人を前提としておりますが、重症度、病期、病型については考慮しておりません。

ここで注意すべき点ですが、表中で「△」としている組み合わせは、ガイドライン上で明らかな問題が確認できなかった場合に付しています。つまり、「確認できなかった」というだけであり、副作用リスクや保険適用上の問題などが存在する可能性を否定するものではありません。

また、「◯」だから臨床上問題がない、「×」だから絶対に行うべきではない、ということでもありません。あくまでこの表はガイドラインをもとに一覧性を高める目的で作成したものです。臨床においてガイドラインは参考指針であり絶対ではありませんので、記号による表示が臨床上の絶対的な判断基準となるものではない点をご理解ください。

治療効果が高まる併用

ガイドラインにおいて、併用により治療効果の向上が報告されている組み合わせについてご紹介します。

  • ステロイド外用薬 × セファランチン内服(1×7)
    日本皮膚科学会ガイドラインでは、セファランチンは単発型・多発型の円形脱毛症において「併用療法の一つとして行ってもよい」(推奨度2C)とされています。特にカルプロニウム外用液やステロイド外用剤との併用で効果が高まったとの報告が引用されております。
  • カルプロニウム塩化物外用 × セファランチン内服(9×7)
    上記と同様に、カルプロニウム外用とセファランチン内服の併用は、カルプロニウムと他剤の組み合わせの中で有効性が高い組み合わせとして報告があります。
  • 局所免疫療法 × 抗ヒスタミン薬内服(4×8)
    アトピー素因を有し、脱毛面積が50%以上の重症例において、局所免疫療法(接触免疫療法)に第二世代抗ヒスタミン薬を併用すると治療効果が高まるという報告がガイドラインに記載されています。
  • ステロイド外用薬 × 抗ヒスタミン薬内服(1×8)
    ガイドラインでは「アトピー合併例で併用してもよい」と弱く推奨されています。

併用が推奨されない組み合わせ

次に、併用を避けるべき、あるいは慎重な判断が必要とされる組み合わせについてです。

  • 局所免疫療法 × ステロイド系治療(4×1, 4×2, 4×3)
    局所免疫療法は、意図的に軽度の接触皮膚炎を起こし、免疫を調整して発毛を促す治療法です。しかし、ステロイド外用剤や局所注射を同じ部位に併用すると、炎症反応を抑え込んでしまい、免疫療法の効果を阻害する可能性があります。
    日本皮膚科学会ガイドラインでも「原則としてステロイド外用との併用は行わない」と明記されています。どうしても強い炎症反応が出てしまう場合には、一時的に局所免疫療法を中断しステロイド軟膏で炎症を抑えることなどが考慮されます。
  • 局所免疫療法 × 光線療法(4×6)
    光線療法は皮膚局所の免疫反応を抑える作用があるため、局所免疫療法の効果を阻害する可能性があります。
  • JAK阻害薬内服 × ステロイドパルス療法(5×3)
    JAK阻害薬(バリシチニブ等)と全身性のステロイド大量療法の併用は、強い免疫抑制の重複となり、感染症など重篤な副作用リスクが高まる懸念があります。
    どちらも単独で免疫を抑える強力な治療であり、併用すれば短期的に効果増強が期待できるかもしれません。しかしその分、帯状疱疹や肺炎などの感染症、悪性腫瘍発症リスクの増加など有害事象のリスクも高まります。現状、ガイドライン上ではこの併用を推奨する記載はありません。
  • JAK阻害薬内服 × 光線療法(5×6)
    JAK阻害薬は近年登場した治療ですが、一部に悪性腫瘍の報告があります。一方、光線療法は長期的に皮膚癌のリスクを高める可能性が知られています。両者を併用すると、理論的には皮膚癌などのリスクが相加的に増える懸念があります。
  • その他の注意点
    上記以外にも、作用機序が競合したり、副作用を助長する組み合わせには注意が必要です。
    たとえば、ステロイド局所注射は少量とはいえ血中移行しうるため、ステロイドパルスと頻回に併用すると全身ステロイド量が累積し、副作用リスクの増加につながります。また、複数の免疫抑制系治療を同時に行えば、感染症リスクはそれだけ高まります。
    治療併用の判断は慎重に行い、それぞれの治療効果と副作用のバランスを見極めることが重要です。

まとめ

本記事の内容を簡潔にまとめます。

ガイドライン上、治療効果の向上が認められる組み合わせ
• ステロイド外用薬 × セファランチン内服(1×7)
• カルプロニウム塩化物外用 × セファランチン内服(9×7)
• 局所免疫療法 × 抗ヒスタミン薬内服(4×8)
• ステロイド外用薬 × 抗ヒスタミン薬内服(1×8)

ガイドライン上、または作用機序的に併用が推奨されない組み合わせ
• 局所免疫療法 × ステロイド系治療(4×1, 4×2, 4×3)
• 局所免疫療法 × 光線療法(4×6)
• JAK阻害薬内服 × ステロイドパルス療法(5×3)
• JAK阻害薬内服 × 光線療法(5×6)

繰り返しになりますが、本記事で示した表は、臨床上の絶対的な判断基準となるものではありません。個々の患者さんの状態、重症度、病期、合併症などを総合的に考慮した上で、治療方針を検討ください。
ここまでご拝読ありがとうございます。この記事が皆様の今後に役立てれば幸いです。それでは。

余白ノート

脱毛症の患者さんは、深刻に症状について悩む方が多い印象があります。ある治療を実施している途中でも、さらにできることはないですかと聞かれた経験が何度かあり、この記事を書こうと考えました。
適応は症例ごとに異なるところはあるでしょうが、併用の可否についてある程度の勘所を持っておくことは適切な治療法選択につながるのではないかと思います。

参考文献

日本皮膚科学会 円形脱毛症診療ガイドライン 2024 (https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/AAGL2024.pdf)

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皮膚科専攻医。日々の診療と学習で生じた疑問を、臨床で使える形に整理して記録しています。皮膚科初学者〜専攻医の「つまずきやすいポイント」を中心に、思考過程と学びを共有します。
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