Uncategorized

掌蹠の膿疱と角化をどう切り分けるか――掌蹠膿疱症・掌蹠の乾癬・手湿疹の鑑別

derm-thinking

膿疱軸――掌蹠に膿疱・小水疱を見たら、まず段階(小水疱→pustulo-vesicle→膿疱)と既往を確かめ、白癬・疥癬・膿痂疹をKOH直接鏡検・虫体検索・培養で評価し、汗疱との鑑別は生検部位と病理で詰める。
角化軸――膿疱が確認できない角化病変は、掌蹠乾癬・角化型手湿疹・角化優位の掌蹠膿疱症を分けられない時点があると認め、だからこそ膿疱の既往・爪・掌蹠外病変・経過を読む。
共通の作法――掌蹠膿疱症を疑いながら膿疱が確認できなければ疑い症例として経過をみ、ダーモスコピーの血管配列や褐橙色dots・随伴所見は疑いを引き上げる方向にのみ使い、パッチテスト陰性を除外の根拠にしない。

[1][7][2][3][4][5][6][9][10]


はじめに

手のひらや足の裏に小さな膿疱と紅斑を見て、「掌蹠膿疱症でしょう」と一言で片づけそうになる場面は、外来で珍しくないのではないでしょうか。痒みを伴う小水疱を「汗疱ですね」と答え、後日膿疱が混じった状態で戻ってきた患者さんに戸惑った経験のある方もいるかもしれません。逆に、紅斑と鱗屑だけの手掌を前に、乾癬(psoriasis)なのか湿疹なのか決めかねることもあります。

掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis: PPP)の最大の特徴である膿疱は、常時みられるわけではありません[1]。膿疱が出現しなくなり角化が優位な臨床型へ変化した時点だけを見ると、乾癬と区別はできないと手引きも述べています[1]。この鑑別の難しさは「典型例を当てられるか」ではなく、「膿疱のない時点でどう振る舞うか」にあるといえます。本稿では、「膿疱があるか、あったか」を最初の問いに置き、膿疱が確認できるときとできないときの2つの場面(本稿では便宜上「膿疱軸」「角化軸」と呼びます)に分けて、診察の場で掌蹠膿疱症と類似疾患を分けるための手がかりを整理します。治療の選択や掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis: PAO)の評価には立ち入りません。


前提を揃える

膿疱の段階と「あったか」

手引きは掌蹠膿疱症を、手掌と足底あるいはその何れかに新旧の無菌性膿疱を多発し、消長を繰り返しながら慢性の経過を辿る疾患と定義し、診断の主要項目として、無菌性膿疱の多発、慢性再発性の経過に加えて、乾癬・接触皮膚炎(contact dermatitis)・汗疱(pompholyx)・手・足白癬(tinea manuum, tinea pedis)・好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis)・菌状息肉症(mycosis fungoides)を「除外できる」ことを挙げています[1]。除外が主要項目に組み込まれている以上、掌蹠膿疱症の診断とは鑑別を進めることと同義です。

膿疱は小水疱(vesicle)→膿疱化水疱(pustulo-vesicle)→膿疱(pustule)の順で形成されますが、小水疱がすべて膿疱になるわけではありません[1]。痒みは膿疱になる前の段階に自覚することが多く、膿疱になってしまうと痒くはないことが多いとされています[1]。「痒い小水疱」という所見は汗疱に限ったものではなく、掌蹠膿疱症の膿疱前段階でも生じうるわけです。手引きは、受診時に膿疱を確認できない場合は疑い症例として経過をみていく必要があるとし、膿疱が極めて小さい場合はダーモスコピーで確認するとしています[1]。本稿でいう「あったか」は、問診で膿疱や小水疱の既往を聞き取ることと、いま目の前にある痂皮や落屑を膿疱の跡として読むことの両方を指します。

用語と海外文献の「PPP」

本稿では、汗疱(異汗性湿疹。手湿疹診療ガイドラインの再発性水疱型(汗疱型)手湿疹[2])を「汗疱」、膿疱を主体とする乾癬側を「掌蹠限局型膿疱性乾癬(palmoplantar pustular psoriasis)」、角化・鱗屑を主体とする尋常性乾癬の掌蹠病変を「掌蹠乾癬」と表記します。海外論文の「PPP」は、掌蹠膿疱症ではなく掌蹠乾癬(palmoplantar psoriasis)を指すことがあり[3]、海外のpalmoplantar psoriasisは膿疱型を含む定義で使われることも多いため[4]、本稿で海外文献を引く際は「掌蹠乾癬」または「掌蹠膿疱症」に置き換え、置き換えたことを注記します。なお手引き自身も、掌蹠限局型膿疱性乾癬は水疱を生じないので掌蹠膿疱症とは異なる疾患である、という立場をとっています[1]。


掌蹠病変を2つの場面で読む

膿疱が確認できない時点では疑い症例として経過をみることになり、角化が優位な臨床型はその時点だけをみると乾癬と区別できません[1]。裏を返せば、掌蹠の鑑別は膿疱の有無で進め方が変わるということです。2つの場面はきれいに分かれるものではなく、膿疱が主体でも慢性化すれば紅斑・鱗屑・肥厚・亀裂が加わります[1]。個々の症例では、両方の場面の視点を行き来することになると思います。

膿疱・小水疱があるとき

鑑別の中心になるのは、掌蹠膿疱症、汗疱、掌蹠限局型膿疱性乾癬、手・足白癬の小水疱汗疱型、疥癬(scabies)です。表1に、共通の判断軸に沿って並べます。

疾患膿疱の段階・既往と分布ダーモスコピー・鱗屑検査・病理
掌蹠膿疱症新旧の無菌性膿疱が混在。小水疱→pustulo-vesicle→膿疱の順に形成され、痒みは膿疱前段階に多い。受診時に膿疱がなければ疑い症例として経過をみる。母指球・小指球・手掌中央、足底・踵・足縁に好発。片側性や手足一方のこともあるpustulo-vesicle(水疱中央の白色小膿疱)を探す。あれば疑いを強く引き上げる(なくても除外しない)。慢性化すると紅斑・鱗屑・肥厚・痂皮・亀裂KOHで白癬を除外し、膿痂疹の鑑別に細菌培養。生検はpustulo-vesicle、困難なら水疱。spongiosisのない単房性水疱と辺縁のmicroabscess。水疱内は単核球
汗疱手掌・手指側縁に両側性・対称性の小水疱が多発し、強い痒み。初期は透明で紅斑なし。次第に乾燥・落屑して紅斑。足底にも。夏期に増悪多房性の水疱。pustulo-vesicleはみられないとされる表皮内リンパ球浸潤と海綿状態。海綿状水疱で大小の水疱が混在。水疱内にヒアルロン酸を多量に含む角化細胞
掌蹠限局型膿疱性乾癬手引きの鑑別表では膿疱性乾癬として、膿疱のみがみられ、全身に膿疱・紅斑を伴うことが多いとされる。掌蹠限局型は水疱を生じず、掌蹠膿疱症がほとんどの例で小水疱から膿疱化する経過をとるのと異なるpustulo-vesicleはみられないとされるダーモスコピー・皮膚生検。病理はKogoj海綿状膿疱ではじまる
手・足白癬(小水疱汗疱型)指趾間から掌蹠へ広がり、水疱や汗疱状の鱗屑。急性炎症で痒みが強く、白癬疹を起こしやすい。手白癬は片側性のことが多いpustulo-vesicleはみられないとされるKOH直接鏡検が迅速確実。水疱周囲の鱗屑から検鏡する。怠ると誤診の元
疥癬疥癬でも水疱がみられることがあり、小水疱・膿疱・痂皮も。手関節屈側・手掌・指間・指側面の疥癬トンネル。たいてい他部位にも症状ダーモスコピーでヒゼンダニを確認できれば診断できる顕微鏡検査(検出率は10〜70%と幅がある)。臨床症状・虫体検出・疫学の3項目で診断。陰性でも否定できなければ再検査

出典: [1][2][5][6]。列は共通の判断軸のうち「膿疱の有無・段階・既往」「分布と広がり」「鱗屑・角化とダーモスコピー」「検査」に対応し、「随伴・背景」は表に置かず本文とチェックリストで扱う。掌蹠限局型膿疱性乾癬行の膿疱・分布の記述は、手引きの鑑別表の「膿疱性乾癬」行による。「pustulo-vesicleはみられない」は手引きの作成委員による記述であり、感度・特異度を示す比較研究に基づくものではない。

この表を縦に見ると、疾患ごとに膿疱の出方も分布も多様です。しかし横に見ると、どの行でも確認することは膿疱の段階と既往、分布、ダーモスコピー、検査の4つに収束します。

掌蹠膿疱症と汗疱

痒みを伴う小水疱の段階では両者はよく似ており、手引きも、しばしば鑑別に苦慮すると述べています[1]。「痒い小水疱」の時点で汗疱と決めるのではなく、過去に膿疱や痂皮があったか、これから膿疱化するかを、問診と経過で確認します。

ダーモスコピーでは、水疱の中央に白色の小膿疱を有するpustulo-vesicleを探します。手引きは、白癬や汗疱、膿疱性乾癬などではpustulo-vesicleは見られず掌蹠膿疱症に特徴的な所見といえるとし、ダーモスコピーを推奨度B*(RCTでは確認されていないが作成委員の合意による推奨)、エビデンスレベルVで有用としています[1]。ただし「他疾患では見られない」は作成委員の記述であり、感度・特異度を示す比較研究ではありません[1]。したがって、この所見は次の2点を押さえて使います。**pustulo-vesicleがあれば掌蹠膿疱症の疑いを強く引き上げますが、膿疱が無菌性であることの確認、つまり感染症の除外は別途必要です。逆に、pustulo-vesicleが見つからなくても掌蹠膿疱症は除外できません。**膿疱そのものが常時みられるわけではないからです[1]。

病理では、掌蹠膿疱症の水疱は汗管付近に単房性に形成され、周囲にspongiosisを伴わず、角層に接して好中球が集積し、水疱内膿疱の辺縁にmicroabscessがみられます[1]。汗疱は表皮内へのリンパ球浸潤が主で海綿状態がみられ、水疱は海綿状水疱で大小の水疱が混在します[1]。手引きが紹介する報告では、確定診断にはできるだけpustulo-vesicleの病理組織所見を用いることが望ましく、それが困難な場合は完成した膿疱よりむしろ水疱を生検し、水疱内の細胞が単核球か角化細胞かを観察することが推奨されています[1]。生検の第一候補はpustulo-vesicle、それが難しければ完成した膿疱ではなく水疱を狙うという、直感とはやや逆の順序です(図1)。

図1: 掌蹠膿疱症の膿疱の段階と生検部位。小水疱→pustulo-vesicle→膿疱→痂皮の順に形成されるが、小水疱がすべて膿疱になるわけではない。生検の第一候補はpustulo-vesicle、困難なら水疱(完成した膿疱では特徴的所見が得られにくい)。痒みは膿疱になる前の段階に多い[1]。

感染症と膿疱性乾癬

掌蹠膿疱症の膿疱は無菌性ですから、感染症の除外が前提になります。手引きは、真菌感染が疑われる場合にはKOHを用いた真菌検査を行い、膿痂疹(impetigo)の鑑別のために一般細菌培養を行い、二次感染が疑われる場合は感染症が軽快してから再度検査を行うとしています[1]。皮膚真菌症診療ガイドラインは、汗疱・異汗性湿疹などとの鑑別で直接鏡検を怠ったために診断を誤った事例は枚挙にいとまがないとし、手と足に同様の小水疱と鱗屑がみられる症例で足は菌陽性・手は陰性となることもあると述べています[5]。検鏡は水疱周囲の鱗屑から[1]、手だけでなく足も対象にします。海外の手湿疹ガイドラインも、特に片側性の手湿疹では真菌の検査を行い、疥癬も除外すべきだとしています[7]。疥癬は、臨床症状、ヒゼンダニの検出、疫学的流行状況の3項目で診断し、検査が陰性でも否定できなければ間隔をおいて再検査します[6]。

膿疱性乾癬側との鑑別点は、表1に示した経過と分布です。掌蹠限局型膿疱性乾癬は水疱を生じず、掌蹠膿疱症はほとんどの例で小水疱から膿疱化する経過をとる点で異なります[1]。全身に膿疱や紅斑が広がる場合は、掌蹠の鑑別という枠を超えて、汎発性膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis)としての評価が必要になります。また、急性扁桃炎を機に一過性に手足に生じる無菌性膿疱は細菌疹(bacterid)として考え、掌蹠膿疱症とは診断しないとされています[1]。

ステロイド外用で悪化する掌蹠病変では、感染症をもう一度考え直す価値があります。疥癬は、ステロイド剤の内服・外用で悪化することがあると疥癬診療ガイドラインも述べています[6]。白癬については、ステロイド外用で修飾された掌蹠の白癬を直接扱った国内ガイドラインの記述は確認できていませんが、「直接鏡検を怠ると診断を誤る」という記述[5]から組み立てた提案として、外用に反応しない掌蹠病変ではKOH直接鏡検を再度行うことを挙げておきます。

その他、手引きの鑑別表に挙げられている疾患を簡潔に記します[1]。

  • 稽留性肢端皮膚炎(acrodermatitis continua of Hallopeau): 指尖部を中心に膿疱・紅斑・落屑。ダーモスコピー・皮膚生検。欧州の研究用定義では爪装置の侵襲を必須とし、爪装置を侵さない膿疱は掌蹠膿疱症または未分類の膿疱症として扱う[8]
  • 好酸球性膿疱性毛包炎: 全身に膿疱を伴うことが多い。病理で好酸球性膿疱を確認する
  • 接触皮膚炎: アレルゲンが接触した部分のみに皮疹が出る。問診が鍵になる
  • 菌状息肉症: 皮膚生検でPautrier微小膿瘍などを確認する
  • 掌蹠角化症(palmoplantar keratoderma): 皮膚生検で著明な過角化と顆粒層の肥厚がみられ、好中球の集積像が観察されない
  • 梅毒(syphilis): 丘疹性梅毒から膿疱性梅毒に移行することがある。梅毒血清反応を確かめる

膿疱が確認できないとき

膿疱が確認できず、紅斑・鱗屑・角化が主体の場面では、掌蹠の乾癬(尋常性乾癬の掌蹠病変)、角化型手湿疹(hyperkeratotic hand eczema)、角化優位に移行した掌蹠膿疱症、手・足白癬の角化型が鑑別の中心になります。手引きが「この時点だけをみると乾癬と区別はできない」と述べている[1]のはこの場面であり、掌蹠乾癬と角化型手湿疹の区別もダーモスコピー・病理ともに重なりが残ります[4][9]。分けられない時点があることを認めたうえで、だからこそ膿疱の既往・爪・掌蹠外病変・経過を読み続ける、というのがこの場面の作法です。

疾患膿疱の段階・既往と分布ダーモスコピー・鱗屑検査・病理
掌蹠の尋常性乾癬(非膿疱性)膿疱の既往を欠く(本表の前提)。境界明瞭な紅斑・鱗屑を伴う角化性局面。全身に厚い鱗屑を付す紅斑が多発し、爪の点状陥凹・剝離・黄濁肥厚など規則的に分布する点状血管(乾癬寄り)。鱗屑の色は鍵にならない乳頭上表皮の菲薄化・顆粒層の減少は乾癬寄りだが、個々の症例では重なる。膿疱型を含みうる掌蹠乾癬21例の症例集積では、spongiosisが約9割にみられた
角化型手湿疹小水疱を欠く。膿疱の既往は通常ない。境界明瞭な厚い鱗屑、ときに亀裂。明らかな紅斑は通常なし。足底にも。中年以降の男性に多い褐橙色dots/globules(湿疹寄り)。血管配列は局所的または不規則spongiosis・parakeratosisは掌蹠乾癬と広く重なる。パッチテストは手湿疹全体に行う検査で、陰性は除外にならない
角化優位の掌蹠膿疱症過去の小水疱・膿疱の既往、現在の痂皮・落屑。紅斑・鱗屑・肥厚・亀裂。掌蹠外病変は浸潤が軽度で厚い鱗屑を伴わず境界不明瞭。爪病変は3割程度で乾癬に似る極めて小さい膿疱やpustulo-vesicleを探す。なくても除外しない疑い症例として経過をみる。掌蹠外病変の病理にMunro微小膿瘍はみられない
手・足白癬(角化型)踵や母指球に及び、炎症は軽微で掌蹠全体の角質増殖が主症状。痒みはほとんどない。手白癬は片側性のことが多いKOH直接鏡検。爪変形を伴う場合も真菌検査を行う

出典: [1][2][3][4][5][9][10]。列の対応は表1と同じ。国内の文献が直接支えるのは、角化優位期の掌蹠膿疱症が「乾癬と区別できない」こと[1]、角化型手湿疹の定義と乾癬一般の臨床像・爪の変化[2]、白癬の臨床型[5]までであり、掌蹠乾癬の臨床像・ダーモスコピー・病理の各セルは海外の小規模研究(21〜142例)に基づく。掌蹠膿疱症を明示的に除外しているのはダーモスコピーのインドの研究[3]のみで、病理の2研究[4][9]には膿疱を伴う乾癬例が含まれうる。問診で膿疱の既往が判明した場合は、表1の場面として読み直す。

この表を縦に見ると、行ごとに支持する手がかりは異なります。しかし横に見ると、ダーモスコピーと病理の列には「重なる」「除外しない」が繰り返し現れ、この場面の決め手が膿疱の既往と経過に戻ってくることが分かります。

4つの手がかりと、その使い方

角化優位に移行した掌蹠膿疱症は乾癬と区別できない時点がある[1]からこそ、次の4つを読みます。第一に、膿疱の既往を問診と痂皮・落屑から拾います。第二に、です。手引きが報告を引いて述べるところでは、掌蹠膿疱症に爪病変を伴う頻度は乾癬より少なく3割程度ですが、所見は乾癬とよく似ています[1]。第三に、掌蹠外病変の性状です。掌蹠膿疱症の掌蹠外病変は乾癬に似ますが、浸潤は軽度で厚い鱗屑を伴わず、境界も不明瞭とされています[1]。掌蹠乾癬を疑う方向には、全身の厚い鱗屑を付す紅斑と爪の変化が手がかりになります[2]。第四に、経過です。膿疱が出れば、場面は表1へ移ります。

手引きは、患者さんが最初に掌蹠外病変しか見せない場合は診断に苦慮し、手足の皮疹が後から分かって掌蹠膿疱症と診断がつくこともある、と「一つの落とし穴」を挙げています[1]。体幹・四肢の落屑性紅斑を見たときに手足も診る、という順序が意味を持ちます。

前胸壁痛、喫煙、病巣感染は手引きが参考項目として挙げる随伴・背景ですが[1]、いずれも疑いを引き上げる方向にしか使えません。爪病変は掌蹠膿疱症にも3割程度にあり、「爪病変があれば乾癬」とは言えません[1]。喫煙は乾癬側の膿疱性病変とも関連するという報告を手引きも紹介しており[1]、「乾癬患者の前胸壁に関節症状がみられれば,SAPHO症候群ではなく乾癬性関節炎である」という手引きの一文[1]を鑑別の場面に読み替えれば、前胸壁痛があっても乾癬は除外できません。「掌蹠膿疱症には喫煙者や前胸壁痛を伴う患者さんが多い」と「非喫煙者で前胸壁痛がなければ掌蹠膿疱症は考えにくい」は別の命題です。

パッチテストについても同じ構造です。手湿疹診療ガイドラインはパッチテストを手湿疹全体に行う検査と位置づけており[2]、汗疱型が金属アレルギーを伴うこともあるという記述[2]と合わせて、汗疱を疑う場面で金属を含めた接触アレルゲンを検索する余地はあります(この組み合わせは同ガイドラインの2つの記述から組み立てた提案です)。ただし、パッチテスト陰性は除外にならず[2][7]、「金属アレルギーの関与」と「汗疱か掌蹠膿疱症か」は別の命題です。手引きは、掌蹠膿疱症でも歯科金属アレルギーの関与が報告されている一方、金属パッチテストが陽性であることがすなわち掌蹠膿疱症の原因とはいえないと述べています[1]。

ダーモスコピーと病理の限界

ダーモスコピーの根拠は、掌蹠乾癬と掌蹠湿疹を比較した海外の研究です。インドの単施設で病理確定した81例(掌蹠乾癬39例、掌蹠湿疹42例)を診断を知らない2名が読影した研究では、規則的に分布する血管は掌蹠乾癬に(感度84.6%・特異度97.6%)、褐橙色のdots/globulesは掌蹠湿疹に(感度66.7%・特異度100%)みられました(原文の略語「PPP」は掌蹠乾癬を指すため置き換えています)[3]。中国の研究(26例・31例)でも血管の規則的な配列が最も有用な所見とされ、鱗屑の色は鍵となる鑑別点にはならないと述べられています[10]。いずれも小規模で、インドの研究は掌蹠膿疱症を除外し、中国の研究には掌蹠膿疱症の扱いの記載がありません。感度・特異度を診断基準に読み替えることはせず、規則的な血管配列は乾癬の疑いを、褐橙色dots/globulesは湿疹の疑いを、それぞれ引き上げる方向にのみ使い、所見がないことを除外の根拠にはしない、という使い方が現実的です。

病理も同様です。ドイツの142検体(手湿疹80、掌蹠乾癬62。手背の検体も含む)をデジタル病理で定量した研究では、乳頭上表皮の菲薄化(ROC曲線下面積、AUC 0.72)と顆粒層の減少(AUC 0.602)は乾癬寄りでしたが、spongiosisとparakeratosisは両疾患で広く重なりました[9]。イタリアの21例(膿疱病変を伴う症例を明示的に除外していない)では、掌蹠乾癬でもspongiosisが19例(90.5%)にみられ、著者らはspongiosisの存在が掌蹠乾癬の診断を除外しないと述べています[4]。角化型手湿疹に相当するhyperkeratotic hand dermatitisについては、Sariらが紹介する先行研究のなかに、その病理所見が慢性手湿疹よりも掌蹠乾癬に近いとする報告もあり[9]、病理でも判断が分かれる場面があると考えておく方が安全でしょう。

病理の位置づけは場面で異なります。掌蹠膿疱症と汗疱では、手引きが両者の鑑別法として病理所見を紹介しており、pustulo-vesicleを狙った生検が確定診断に近づく手段になります[1]。掌蹠乾癬と手湿疹では所見の重なりが大きく、海外の手湿疹ガイドラインも皮膚生検を乾癬などの鑑別診断を除外するためにのみ推奨しています[7]。本稿では、膿疱が確認できない場面での生検を、確定というより除外のための検査として位置づけます。

経過をみるということ

膿疱が確認できないまま鑑別が確定しない場合、手引きが示す行動は「疑い症例として経過をみていく」です[1]。手引きが具体的に書いているのは、膿疱が極めて小さい場合はダーモスコピーで確認すること、感染症が軽快してから再度検査を行うこと、までです[1]。どの間隔で再診し、その間にどの治療を行うかは手引きの記述にはなく、本稿でも組み立てません。経過をみるとは、診断を保留したまま放置することではなく、膿疱の既往・爪・掌蹠外病変・経過(新しい膿疱の出現)を、受診のたびに読み直すことだと、本稿では理解しておきます。

診察で確認したいポイント

ここまでの内容を踏まえ、掌蹠の膿疱・角化性病変を診るときに確認したいポイントを、共通の判断軸の順に挙げます。並び順は診察の時系列(膿疱→分布→角化→背景→検査)に沿っています。

  • 膿疱の有無・段階・既往: 小水疱・pustulo-vesicle・膿疱・痂皮のどの段階が今あるか、あったか。痒みの時期。極めて小さい膿疱はダーモスコピーで確認する[1]
  • 分布と広がり: 片側性か、手または足のみか。好発部位。掌蹠外病変の性状と爪[1][2]
  • 鱗屑・角化とダーモスコピー: 境界の明瞭さと鱗屑の厚さ。規則的な血管配列は乾癬寄り、褐橙色dots/globulesは湿疹寄りの手がかりとして、疑いを引き上げる方向にのみ使う[3][10]
  • 随伴・背景: 前胸壁痛、喫煙、病巣感染、金属アレルギー。疑いを引き上げる方向にのみ使い、該当しないことを除外の根拠にしない[1]
  • 検査(KOH直接鏡検と培養): 真菌感染が疑われればKOH、膿痂疹の鑑別に一般細菌培養。手だけでなく足も検鏡する[1][5]
  • 検査(生検部位と病理): 第一候補はpustulo-vesicle、困難なら水疱。膿疱が確認できない場面では病理の重なりを前提に、除外目的の検査と位置づける[1][7][9]
  • 掌蹠膿疱症を疑いながら膿疱が確認できなければ、疑い症例として経過をみる: 受診のたびに膿疱の既往・爪・掌蹠外病変・経過(新しい膿疱の出現)を読み直す[1]

これらは項目を並べたルーチンではなく、膿疱のない時点で診断を保留しながら観察を続けるための根拠として、ひとつずつが機能します。この7つは鑑別の網羅性を保証するものではなく、診察の入口で思考を立ち上げるための最小セットです。


おわりに

掌蹠の膿疱と角化性病変の鑑別を、「膿疱があるか、あったか」を最初の問いに置く2つの場面で整理しました。膿疱が確認できる場面は手引きの記述に厚く支えられ、膿疱が確認できない場面には分けられない時点があります。だからこそ、膿疱の既往・爪・掌蹠外病変・経過を読み続けることが、この場面での臨床行動になります。7つの確認事項が網羅的な基準ではなく最小セットであることは、繰り返しておきたい点です。

手引きの「疑い症例として経過をみていく」という一文は、診断を急がないための言い訳ではなく、診断を保留したまま観察を続けるという積極的な行動の指針として読めます。掌蹠膿疱症は、診断を保留しながら観察を続けることの意味を教えてくれる疾患なのかもしれません。

ここまでお読みいただきありがとうございます。この記事が皆様の今後のお役に立てれば幸いです。それでは。


余白ノート

掌蹠の病理標本を見るとき、spongiosisを見つけると反射的に「湿疹寄りだな」と考えていました。乾癬ではMunro微小膿瘍や顆粒層の消失、湿疹ではspongiosisという対比[4]が、体幹や四肢の皮疹ではそれなりに働くと感じていたからです。しかし今回、掌蹠乾癬の病理を調べてみると、膿疱型を含みうるイタリアの21例ではspongiosisが19例にあり[4]、ドイツの142検体ではspongiosisもparakeratosisも乾癬と湿疹で広く重なっていました[9]。掌蹠という部位では、体幹で使っていた対比の片側が崩れるわけです。

経験的に身についた読み方でも、部位が変わればそのまま使えるとは限らないのだと思います。機を見て自分の判断の根拠を再解釈してみることが大切なのではないでしょうか。掌蹠のspongiosisは、私にとってその小さな例のひとつになりました。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会掌蹠膿疱症診療の手引き策定委員会(照井正, 小林里実, 山本俊幸, 大久保ゆかり, ほか). 掌蹠膿疱症診療の手引き2022(2022年9月20日更新版). 日本皮膚科学会雑誌 2022;132(9):2055-2113. doi:10.14924/dermatol.132.2055. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/PPP2022_220920.pdf
  2. 日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 手湿疹診療ガイドライン委員会(高山かおる, 片山一朗, 室田浩之, 佐藤貴浩, ほか). 手湿疹診療ガイドライン. 日本皮膚科学会雑誌 2018;128(3):367-386. doi:10.14924/dermatol.128.367. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/Hand_eczema_GL.pdf
  3. Chauhan P, Meena D, Jindal R, et al. Dermoscopy in the diagnosis of palmoplantar eczema and palmoplantar psoriasis: a cross-sectional, comparative study from a tertiary care centre in North India. Indian J Dermatol. 2023; 68(1): 120. DOI: 10.4103/ijd.ijd_908_21. PMCID: PMC10162722
  4. Broggi G, Failla M, Palicelli A, et al. Palmoplantar psoriasis: a clinico-pathologic study on a series of 21 cases with emphasis on differential diagnosis. Diagnostics (Basel). 2022; 12(12): 3071. DOI: 10.3390/diagnostics12123071. PMCID: PMC9777128
  5. 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会(福田知雄, 原田和俊, 五十棲健, 小川祐美, ほか). 皮膚真菌症診療ガイドライン2025. 日本皮膚科学会雑誌 2025;135(13):2511-2566. doi:10.14924/dermatol.135.2511. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/135/13/135_2511/_pdf
  6. 日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会(石井則久, 浅井俊弥, 朝比奈昭彦, 石河晃, ほか). 疥癬診療ガイドライン(第3版). 日本皮膚科学会雑誌 2015;125(11):2023-2048. doi:10.14924/dermatol.125.2023. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/kaisenguideline.pdf
  7. Thyssen JP, Schuttelaar MLA, Alfonso JH, et al. Guidelines for diagnosis, prevention, and treatment of hand eczema. Contact Dermatitis. 2022; 86(5): 357-378. DOI: 10.1111/cod.14035
  8. Navarini AA, Burden AD, Capon F, et al.; ERASPEN Network. European consensus statement on phenotypes of pustular psoriasis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017; 31(11): 1792-1799. DOI: 10.1111/jdv.14386
  9. Sari M, Schliep S, Petzold A, et al. Harnessing digital pathology tools to distinguish hand eczema from palmar psoriasis: a quantitative approach. J Cutan Pathol. 2026; 53(5): 444-453. DOI: 10.1111/cup.70064. PMCID: PMC13040410
  10. Yu X, Wei G, Shao C, et al. Analysis of dermoscopic characteristic for the differential diagnosis of palmoplantar psoriasis and palmoplantar eczema. Medicine (Baltimore). 2021; 100(5): e23828. DOI: 10.1097/MD.0000000000023828. PMCID: PMC7870165
ABOUT ME
皮膚科専攻医の思考ノート
皮膚科専攻医の思考ノート
皮膚科専攻医
皮膚科専攻医。日々の診療と学習で生じた疑問を、臨床で使える形に整理して記録しています。皮膚科初学者〜専攻医の「つまずきやすいポイント」を中心に、思考過程と学びを共有します。
記事URLをコピーしました