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皮膚科外来のための内服抗真菌薬—適応早見表と禁忌・相互作用—

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導入

皮膚科外来において、時に外用抗真菌薬のみでは治療が困難な真菌症に遭遇することがあります。爪白癬や頭部白癬、深在性真菌症などでは内服抗真菌薬が必要となりますが、いざ処方を検討する段階になると、「禁忌に該当しないか」「併用薬との相互作用は問題ないか」「投与中のモニタリングはどのように行うべきか」といった点で判断に迷う場面があるのではないでしょうか。
内服抗真菌薬は肝障害や薬物相互作用をはじめとする副作用への配慮が求められる薬剤が多く、処方にあたっては事前の確認が欠かせません。本記事では、主な皮膚真菌症と適応のある内服抗真菌薬の対応関係、および各薬剤の禁忌や副作用など注意すべきことを表形式で整理してみました。日々の外来診療において処方内容を確認する際の一助となれば幸いです。

目次


主な皮膚真菌症と適応のある内服抗真菌薬

本項では、皮膚科外来で内服抗真菌薬を検討する場面を想定し、主要な皮膚真菌症と国内で保険適用のある内服抗真菌薬の対応関係を整理しました。
ここで取り上げた疾患は、白癬、皮膚カンジダ症、癜風、スポロトリコーシス、クロモブラストミコーシスなど、皮膚科外来で比較的遭遇しやすい疾患です。
なお、皮膚クリプトコッカス症、皮膚アスペルギルス症、皮膚ムーコル症については、予後不良であり播種性感染の検索や全身管理を要する場合が多いことから、内科・感染症科との連携のもとで治療方針を決定することが望ましく、皮膚科外来のみの診療では完結しないことが多いかと考えます。そのため、本記事の対象からは除外させていただきました。

表1:皮膚真菌症と適応のある内服抗真菌薬

疾患内服薬
白癬テルビナフィン、イトラコナゾール
爪白癬テルビナフィン、ホスラブコナゾール、イトラコナゾール
頭部白癬テルビナフィン、イトラコナゾール
Trichophyton tonsurans 感染症テルビナフィン、イトラコナゾール
皮膚カンジダ症イトラコナゾールカプセル
口腔カンジダ症イトラコナゾール内用液、イトラコナゾールカプセル
外陰膣カンジダ症フルコナゾール
癜風イトラコナゾール
マラセチア毛包炎イトラコナゾール
スポロトリコーシスイトラコナゾール
クロモブラストミコーシスイトラコナゾール、テルビナフィン、ポサコナゾール
真菌性菌腫ポサコナゾール

参考資料:
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf
https://doi.org/10.1086/313751
https://doi.org/10.1111/1469-0691.12515

内服抗真菌薬の使用上の注意

内服抗真菌薬は、その有用性の一方で副作用の頻度が比較的高い薬剤群として知られています。特に肝機能障害は多くの薬剤に共通してみられる副作用であり、投与前および投与中の肝機能モニタリングが重要と考えられます。また、アゾール系抗真菌薬はCYP阻害作用を介した薬物相互作用が多岐にわたるため、併用禁忌・併用注意薬の確認は処方のたびに行うことが望ましいでしょう。
以下の表では、本記事で取り上げる5剤(テルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾール、フルコナゾール、ポサコナゾール)について、それぞれの添付文書を参考に、禁忌・併用禁忌・妊婦/授乳婦/小児への適応・副作用などを一覧として整理しています。
なお、併用禁忌、併用注意薬剤についてはあまりに多く、一部は表にまとめられませんでした。使用の前には添付文書を確認することを推奨します。

表2:内服抗真菌薬の注意事項一覧

薬剤名禁忌併用禁忌・併用注意妊娠/授乳婦/小児重大な副作用
テルビナフィン重篤な肝障害、血液障害、過敏症既往併用禁忌の明記はなし
併用注意:シメチジン、フルコナゾール、リファンピシン、三環系抗うつ薬、マプロチリン、デキストロメトルファン、黄体・卵巣ホルモン混合製剤(経口避妊薬等)、シクロスポリン
妊婦:有益性が危険性を上回る場合のみ。ウサギへの大量投与により母獣の摂餌量の減少、体重増加の抑制が観察された
授乳婦:授乳しないことが望ましい
小児:臨床試験なし
重篤な肝障害
重篤な血液障害(無顆粒球症、汎血球減少 等)、SJS/TEN、アナフィラキシー 等
イトラコナゾール重篤な肝疾患(現症/既往)、肝/腎障害+コルヒチン併用中、過敏症既往、妊婦併用禁忌、併用注意が非常に多い
添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061237
妊婦:禁忌
授乳婦:乳汁移行あり
小児:重症な感染症例で治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用
うっ血性心不全/肺水腫、重篤肝障害/胆汁うっ滞/黄疸、低K血症、偽アルドステロン症、SJS/TEN、間質性肺炎、アナフィラキシー 等
ホスラブコナゾール妊婦:禁忌 過敏症既往 など併用禁忌の明記はなし
併用注意:シンバスタチン、ミダゾラム、アゼルニジピン等CYP3Aにより主に代謝される薬剤、ワルファリン
妊婦:禁忌
授乳婦:乳汁移行あり。授乳しないことが望ましい
小児:臨床試験なし
肝機能障害/黄疸など重篤肝障害、多形紅斑
フルコナゾール妊婦:禁忌 過敏症既往併用禁忌、併用注意が多い
添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058681
妊婦:禁忌
授乳婦:乳汁移行あり。授乳しないことが望ましい
小児:新生児においては投与間隔に留意
重篤肝障害/黄疸、急性腎障害、意識障害、痙攣、高K血症、SJS/TEN、アナフィラキシー、QT延長/心室性不整脈、偽膜性大腸炎 など
ポサコナゾール過敏症既往併用禁忌、併用注意が多い
添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068469
妊婦:ラットにおいて催奇形性などの報告あり。有益性が危険性を上回る場合のみ
授乳婦:乳汁移行あり
小児:国内臨床試験なし
重篤肝障害(肝不全含む)QT延長/心室頻拍(TdP含む)HUS/TTP、低K血症、副腎機能不全、SJS、急性腎障害、汎血球減少、脳卒中 など

参考資料:
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062411
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061237
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067275
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058681
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068469


処方前チェック/モニタリング

内服抗真菌薬を処方する前に、共通して確認しておきたい項目について述べておきます。
第一に、肝機能(AST、ALT、γ-GTP、ALP、T-Bil)の確認は全薬剤において必要です。投与前にベースラインの検査値を把握しておくことで、投与後の変動を適切に評価することが可能となります。腎機能についても、薬剤によっては用量調節を要するため、あわせて確認しておくことが望ましいでしょう。
第二に、併用薬の確認です。特にアゾール系はCYP3A4を中心に強力な阻害作用を有し、併用禁忌薬が非常に多いです。お薬手帳の確認に加え、他科からの処方なども丁寧に聴取しておくことが大切です。
第三に、妊娠の有無の確認も欠かせません。イトラコナゾール、ホスラブコナゾール、フルコナゾールは妊婦には禁忌とされています。妊娠可能年齢の女性に処方する際は妊娠の有無を確認するとともに、投与中および投与後一定期間の避妊の必要性について十分に説明しておく必要があるでしょう。
投与開始後は、肝機能を中心としたモニタリングを定期的に実施するべきだと考えられます。また、症状を自覚した場合には速やかに受診するよう、あらかじめ患者に指導しておくことも重要です。 以下、各薬剤について手短に触れていきます。


テルビナフィン

テルビナフィンはアリルアミン系抗真菌薬であり、皮膚糸状菌(白癬菌)に対して強い殺菌的活性を示します。テルビナフィンの臨床的な利点のひとつとして、アゾール系と比較してCYPを介した薬物相互作用が少ない点が挙げられます。CYP2D6に対する阻害作用を有するため一部の薬剤(デキストロメトルファンなど)との併用には留意が必要ですが、アゾール系のような広範な併用禁忌はみられません。このため、多剤服用中の高齢者など、薬物相互作用のリスクを軽減したい場面では選択しやすい薬剤と考えられます。
一方で、副作用としての肝機能障害には十分な注意が求められます。頻度は高くないものの、重篤な肝障害の報告があります。投与前の肝機能検査は不可欠であり、投与中も定期的なモニタリングが推奨されます。
また、血液障害も重大な副作用として認識しておく必要があります。味覚異常も比較的頻度の高い副作用であり、投与前に患者へ説明しておくことが望ましいでしょう。
テルビナフィンは主に白癬菌への効果が高く、適応疾患と原因菌を確認して使用することが求められます。


イトラコナゾール

イトラコナゾールはトリアゾール系抗真菌薬であり、幅広い抗真菌スペクトラムを有します。白癬、カンジダ、マラセチア、スポロトリコーシス、クロモブラストミコーシスなど多くの皮膚真菌症に適応を持ちます。
イトラコナゾールにおいて最も留意すべき点は、薬物相互作用の多さでしょう。CYP3A4を阻害するため、併用禁忌薬は多岐にわたります。処方前には添付文書で併用禁忌・併用注意薬を確認することが不可欠です。
禁忌としては、重篤な肝疾患を有する患者、妊婦・妊娠している可能性のある女性などが該当します。また、うっ血性心不全を含む心不全のリスクが報告されており、心機能にも配慮が必要となります。


ホスラブコナゾール

ホスラブコナゾールはラブコナゾールのプロドラッグです。イトラコナゾールと同じアゾール系に分類されますが、イトラコナゾールと比較して併用禁忌薬が少ない点は臨床上の利点と考えられます。ただし、CYP3A4阻害に伴い、併用薬剤の血中濃度が変動する可能性が否定できない点には注意すべきでしょう。
禁忌として、妊婦および妊娠している可能性のある女性には投与できません。動物実験において催奇形性が認められております。肝障害を有する患者への投与にも慎重な判断が求められます。
副作用としては、肝機能検査値異常が報告されています。投与中は定期的な肝機能モニタリングを行うことが推奨されます。
なお、現時点では適応が限られている点は認識しておく必要があります。爪白癬以外の皮膚真菌症には使用できないため、適応疾患を確認したうえで選択すべきでしょう。


フルコナゾール

フルコナゾールはトリアゾール系抗真菌薬です。腎排泄型の薬剤であることから、腎機能低下例では用量調節を要する点に注意が必要です。
CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4の阻害作用を有しており、薬物相互作用への注意は欠かせません。ワルファリンとの併用ではPT-INRの上昇に注意が必要です。イトラコナゾールと比較すると相互作用の範囲はやや限定的ですが、処方時の確認は引き続き重要です。
動物実験において催奇形性が認められており、妊婦への投与は禁忌とされています。
副作用としては、肝機能障害、消化器症状などが報告されています。


ポサコナゾール

ポサコナゾールは第二世代のトリアゾール系抗真菌薬であり、幅広い抗真菌スペクトラムを有します。
吸収には個人差があるため、必要に応じて血中濃度モニタリング(TDM)の実施を検討することが望ましいでしょう。
CYP3A4の強力な阻害薬であり、薬物相互作用の範囲はイトラコナゾールと同様に広いため、併用禁忌薬の確認は不可欠です。
ラットにおいて催奇形性の報告があり、妊婦への投与は有益性が危険性を上回るときのみとされています。
副作用としては、肝機能障害、消化器症状、QT延長、電解質異常などが報告されています。QT延長のリスクに応じて心電図検査が考慮されます。また、電解質についても定期的なモニタリングをするべきでしょう。
ポサコナゾールは皮膚科の日常診療において処方する機会は限られるが、難治例で使用を検討する場面に備え、その特性と注意点を把握しておくことは有益だと言えるでしょう。


まとめ

内服抗真菌薬は皮膚真菌症の治療において重要な役割を担う薬剤ですが、いずれの薬剤も副作用や薬物相互作用への配慮が求められます。本記事の要点を改めて整理しましょう。
第一に、疾患ごとに適応のある薬剤は異なるため、表1を参照のうえ、対象となる真菌症に適した薬剤を選択することが出発点となります。
第二に、いずれの薬剤を使用する場合にも処方前のチェック項目には共通する部分が多く、肝機能検査、併用薬の確認、妊娠の有無、この3点は最低限確認しておくべき事項と考えられます。とりわけアゾール系はCYP阻害に起因する併用禁忌が多岐にわたるため、処方のたびに添付文書を参照する習慣を持つことが望ましいでしょう。
第三に、投与中のモニタリングも欠かせません。肝機能を中心とした定期的な検査を行うとともに、全身倦怠感、食欲低下、黄疸などの自覚症状が出現した場合には速やかに受診するよう、あらかじめ患者に説明しておくことが大切です。
内服抗真菌薬は処方する頻度がそれほど高くない分、いざというときに注意点の確認が不十分になりがちです。本記事でまとめた表が、日々の外来診療における処方前の確認に少しでもお役に立てれば幸甚です。なお、本記事の内容はあくまで概要的な整理になります。個々の症例における判断にあたっては最新の添付文書やガイドラインを併せてご参照ください。
ここまでご拝読ありがとうございます。この記事が皆様の今後に役立てれば幸いです。それでは。

余白ノート

抗真菌薬の全身投与には、少し心理的ハードルがあるのではないでしょうか。肝機能障害や血液障害の不安がありますし、薬剤によっては幻視の報告もあります。加えて併用に関して注意すべき薬剤が数多くあります。皮膚科の日常診療では爪白癬以外ではなかなか全身投与する機会が少なく、いざというときにいっそう使いにくく感じてしまいがちです。
今回の記事では臨床現場での実用性を考慮して作成しましたが、なんとなく抗真菌薬を処方しにくいという不安感を拭うことにもつながればと思っています。

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