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蜂窩織炎は治して終わりじゃない―再発予防の考え方―

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蜂窩織炎では再発予防も重要

蜂窩織炎は真皮から皮下組織で生じる細菌感染症です。日常診療で比較的よく見かけますが、診断さえついてしまえば抗菌薬加療で改善することも多いため、「治せば終わり」と感じやすい疾患かもしれません。しかし、蜂窩織炎はしばしば再発を認め、報告によれば3年以内に16〜53%の症例で再発が起こるとされています[6]。本記事では主に成人の下肢に多い非化膿性蜂窩織炎/丹毒を念頭に、海外のガイドラインや他の文献をもとに蜂窩織炎の再発予防についてまとめました。

要約

この記事の要約は以下の通りです。

  • 蜂窩織炎の再発リスク因子は大きく4つに分類できる。
    • (1)侵入門戸
    • (2)下肢の状態
    • (3)全身状態
    • (4)蜂窩織炎の既往
  • 再発予防の基本は、まずこれらのリスク因子を適切に治療・管理することである。
  • 抗菌薬の予防内服は再発リスクを低減し得るが、適応は慎重に判断されるべきである。また、内服中止後は再発抑制効果が持続し難い[5]。

再発リスク因子

蜂窩織炎の再発に関与する主なリスク因子をまとめると、以下のようになります。

リスク因子のカテゴリー具体例
侵入門戸足白癬、皮膚の亀裂、外傷、術後創、下腿潰瘍、掻破性皮膚疾患など
下肢の状態慢性浮腫、リンパ浮腫、静脈瘤・静脈炎などの
慢性静脈不全
全身状態肥満(BMI30超)、糖尿病、悪性腫瘍、
免疫不全(ステロイド長期使用など)
既往蜂窩織炎の既往歴

侵入門戸

蜂窩織炎は皮膚のバリア機能が破綻した部位から細菌が侵入して発症します。そのため外傷や術後創、慢性潰瘍、湿疹病変や皮膚の亀裂など、皮膚に侵入口となる病変があると蜂窩織炎の発症リスクが上昇します[4]。特に足白癬は亀裂、びらんなどを形成し細菌の侵入門戸となり、蜂窩織炎や丹毒を繰り返す患者で合併しやすいとされます[1]。したがって白癬治療は再発防止にとって重要です。

下肢の状態

慢性的な浮腫(リンパ浮腫を含む)は蜂窩織炎再発の主要なリスク因子です。あるメタ解析では慢性浮腫の存在により蜂窩織炎発症オッズ比が約6.8倍に上昇したと報告されています[4]。また、下肢の静脈瘤や静脈炎、深部静脈血栓後症候群など慢性的な静脈循環不全も下肢の鬱滞を招き、蜂窩織炎再発の誘因となります[6]。

全身状態

肥満(BMI30以上)は蜂窩織炎再発リスクを有意に高め、ある報告では約2.4倍に上昇するとされています[4]。糖尿病も末梢循環障害や免疫低下を通じて蜂窩織炎のリスクを高めます[6]。さらに悪性腫瘍の存在や、ステロイド・免疫抑制剤の長期使用による免疫不全状態も蜂窩織炎を発症・再発させやすい背景因子になります[6]。

蜂窩織炎の既往

既往そのものが発症のリスク因子です。蜂窩織炎による炎症は組織の障害や線維化を引き起こし、浮腫や局所免疫の低下を介して再発しやすい構造を残し得ます[6]。「再発した」という事実は、今後は“治療だけでなく予防へ舵を切るべき”サインと捉えることができます。

再発予防

再発性蜂窩織炎に対しては、リスク因子への介入を中心とした予防策が推奨されます。まずは非抗菌薬での予防を行い、その上で必要な症例に抗菌薬での予防を検討します。

非抗菌薬予防

皮膚バリアの保全

  • 小外傷・亀裂のケア:流水と石鹸で洗浄し、ワセリン等で湿潤保持して被覆[2]
  • 保湿:入浴後や手洗い後に保湿剤を十分に塗布し、乾燥による亀裂の発生などの侵入門戸形成を防ぐ[2]
  • 足・爪のセルフチェック:特に糖尿病や感覚低下がある人は毎日観察し、趾間びらん・小外傷を早期に発見、対処する[2]
  • 真菌症の治療:足白癬/爪白癬は積極的に治療し、趾間の亀裂・びらんを減らす[1]

次に、下肢の慢性浮腫やリンパ浮腫への対応です。圧迫療法は慢性浮腫による蜂窩織炎再発リスクを低減する効果が報告されています[6]。重度のリンパ浮腫に対しては場合により外科的治療も考慮されます。

全身状態の改善も再発予防には欠かせません。過体重や肥満の患者が減量することで蜂窩織炎の再発率が減少したとの報告があります[2]。糖尿病などの基礎疾患がある場合には血糖コントロールの最適化に努めることが推奨されます。

抗菌薬予防(抗菌薬予防内服)

蜂窩織炎を繰り返す患者に対し、抗菌薬の長期予防内服療法が検討されることがあります。特に年に複数回再発する症例では、低用量抗菌薬を6〜12ヶ月間継続内服することで再発間隔を延ばせる可能性があります。実際、複数の臨床試験を統合した解析では、抗菌薬予防内服中の蜂窩織炎再発リスクが約30%に低下し有意な予防効果が示されています[5]。

使用される抗菌薬はレンサ球菌に有効なペニシリン系が一般的で、ペニシリンアレルギー時はエリスロマイシンなどで代替されることがあります[3]。

ただし、この予防効果は内服中に限られ、抗菌薬の投与を中止すると再発抑制効果が消失してしまうことも報告されています[5]。そのため抗菌薬予防を行う場合でも、前述のリスク因子への対策を並行して行うことが重要です。また抗菌薬予防内服は誰にでも行うべきものではなく、再発リスクとベネフィットを慎重に検討して限定的に適用されます。

実際のガイドラインでも、蜂窩織炎の抗菌薬予防は限定された症例にのみ考慮すべきとされています。英国NICEガイドラインでは、過去12か月に少なくとも2回蜂窩織炎で入院治療を要した成人に対し、専門医の判断で抗菌薬予防内服を試みることが提案されています。一方でそれ以外の症例に対してルーチンに抗菌薬予防を行うことは推奨されません。抗菌薬長期内服による副作用や耐性菌出現のリスクも踏まえ、患者と相談の上で導入を判断する必要があります[3]。

まとめ

蜂窩織炎は適切な治療で多くは改善しますが、再発を繰り返す症例もしばしばみられます。再発予防には、侵入門戸を防ぎ、下肢状態や全身状態のリスク因子を適切に管理することが不可欠です。
重症例では抗菌薬の予防内服も選択肢となりますが、その適応は慎重に判断されるべきであり、非薬物介入を土台に、患者ごとのリスクとベネフィットを考慮した上で実施されるべきでしょう。

余白ノート

蜂窩織炎自体は抗菌薬投与で改善を認めることが多いかと思いますが、再発を繰り返す症例を一定割合で認めます。患者さんは再発のたびに痛みを抱え、QOLを大きく損なっています。こうして記事としてまとめてみると日常的なケアが優先されるべきと改めて認識しました。ただし、今度はこういったケアを患者さんに継続してもらうこともまたハードルが高いように思えてしまいます。少しずつでもリスク因子を減らしていくことがQOLを保つことにつながるのかもしれません。

参考文献

[1] DermNet. “Cellulitis – Bacterial skin infections”. DermNet (New Zealand Dermatological Society). 【URL: https://dermnetnz.org/topics/cellulitis】.

[2] American Academy of Dermatology. “Cellulitis: How to prevent it from returning”. AAD Public Resource. 【URL: https://www.aad.org/public/diseases/a-z/cellulitis-self-care】.

[3] National Institute for Health and Care Excellence (NICE). “Cellulitis and erysipelas: antimicrobial prescribing” (NICE Guideline [NG141]). 2019. 【URL: https://www.nice.org.uk/guidance/ng141】.

[4] Quirke M, Ayoub F, McCabe A, Boland F, Smith B, O’Sullivan R, Wakai A. “Risk factors for nonpurulent leg cellulitis: a systematic review and meta-analysis.” Br J Dermatol. 2017 Aug;177(2):382-394. doi: 10.1111/bjd.15186. Epub 2017 Jul 25. PMID: 27864837.

[5] Dalal A, Eskin-Schwartz M, Mimouni D, Ray S, Days W, Hodak E, Leibovici L, Paul M. “Interventions for the prevention of recurrent erysipelas and cellulitis.” Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 20;6(6):CD009758. doi: 10.1002/14651858.CD009758.pub2. PMID: 28631307; PMCID: PMC6481501.

[6] Ong BS, Dotel R, Ngian VJJ. “Recurrent Cellulitis: Who is at Risk and How Effective is Antibiotic Prophylaxis?” Int J Gen Med. 2022 Aug 10;15:6561-6572. doi: 10.2147/IJGM.S326459. PMID: 35983462; PMCID: PMC9379124.

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